第13話 初勝利

 ゴブリン一体を葬りさった後、麗華は返す刀で後方にせまってきた一体を両断した。

 胴の部分で真っ二つになったゴブリンは断末魔をあげることなく絶命する。

 まさに秒殺だ。

 麗華は動きを止めない。

 さらに一匹の脳天をかち割ると左横から槍を突きつけてくるゴブリンをひらりとかわし、袈裟斬りにする。

 切って切って切りまくる。

 水のように流れる動作は華麗だ。

 ものの数分でゴブリンたちは半減した。


 さすがの麗華も肩で息をしている。

 彼女はかすり傷一つおっていないが。

 それでも額の汗をぬぐうすがたはまだまだ余裕がありそうだ。


 すごい、ゴブリンなど麗華の前ではまさに雑魚敵だ。

 僕が麗華のほとばしるほどの強さに感動しているとギリギリという甲高い音がする。

 その音の方を観るとゴブリンが粗末な弓を引き絞って僕を狙っている。


「しまった、前に出すぎた」

 珍しく慌てた顔で麗華が言う。

 僕がゴブリンにねらわれていることに気づいた麗華が華麗に身をひるがえし、そのゴブリンに斬りかかる。

 しかし、ゴブリンのほうがわずかに速い。

 錆びた矢が放たれてしまった。

 僕はオリオンにしがみついたまま、どうしようもできない。

 やばいっと思った瞬間、視界に文字が並んでいく。


 固有特技ユニークスキル不可侵領域を発動します。

 所有者の半径三メートルを不可侵領域と決定します。

 領域内はすべての攻撃が無効とされます。


 次に目の前に僕を中心に淡い光の球体が発生し、包んでいく。

 ゴブリンが放った矢は光の球体によって弾き返された。


 こんな能力が僕に‼️

 そう言えば胸元が温かい。

 あのレオナルドの羽ペンを入れていたところだ。

 取り出してみるとその羽ペンの宝石部分が光っている。

 これが僕の星霊器の能力なのか。



「大丈夫?」

 すぐさま麗華は駆け寄り、僕に声をかける。

 駆け寄るついでにあの弓矢のゴブリンを一刀両断していた。


「ああ、大丈夫だよ。なんか固有特技ユニークスキルってのが発動したみたいなんだ」

 僕は答える。


「すごいじゃない、これ。敵の攻撃を全部ふせいでいるよ」

 麗華はそう言い、光の球体を見つめる。

「それに綺麗」

 麗華は言った。


 その間にもゴブリンは何度か弓矢で攻撃するが、すべて光の球体が弾き返す。

 槍や短剣で斬りつけるがそれも光の球体を突き破ることはできない。

 あの羽ペンにこんな能力があったなんて。



「やっぱり、燐太郎はすごいじゃない」

 笑顔で麗華は言うと光の球体から飛び出した。

 どうやらあちらから攻撃されないかわりにこちら側からも攻撃できないようだ。

 僕とオリオンは光の球体の中から麗華の戦いぶりを見るしかできない。


「まかせてよ」

 そう言い、麗華は竜剣ジークフリードを上段にかまえる。

「竜剣よ私に力を‼️」

 麗華が叫ぶと竜剣ジークフリードが青い水に包まれる。

 水は竜の形になり、大地を駆ける。

 麗華はその竜を水竜シードラゴンと呼んだ。

 水竜は残りほとんどのゴブリンを飲み込み、粉砕していく。

 どうやらこれが麗華の星霊器ジークフリードの能力のようだ。



 残るは一体。

 体格のいいゴブリンだけが残っていた。他のゴブリンに比べて体格が一回り大きい。

 どうやらこのグループのボスのようだ。

 彼は長剣を両手で握り、麗華に斬りつける。

 軽いステップでかわすと背後に回り込み、麗華は最上段から一息で竜剣ジークフリードを振り下ろした。

 ボスゴブリンも体を二つに分断され、絶命した。

 どうやら僕たちはこのゴブリンの集団を撃退したようだ。


 ちらりと麗華を見るとレベルが上がっている。この戦闘の経験により麗華のレベルがあがったようだ。

 聖騎士レイカ、レベル28。

 戦闘力が上昇している。


「やったね、初勝利だよ」

 麗華が嬉しそうに言った。

 彼女は返り血をほとんど浴びていない。それほどゴブリンとの戦闘力に差があったということだ。

 竜剣ジークフリードを一振するとついていた血がすべて落ちる。どうやらあの剣は水属性のようで自動的に刃についた血脂を洗い流すようだ。

「そうだね、僕たちアルタイルの初勝利だ」

 僕は言った。

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