第12話 ゴブリン討伐
善は急げと僕たちは早速、ゴブリン討伐に向かうことにした。
ヨークの村は王都キャメロンから南に位置するという。
商人ギルドの代表であるハンナは周辺の地図と数日分の保存食、水を大きなリュックに入れて持たせてくれた。
僕はそれを背負う。
うっ、かなりの重さだ。
それにつけ加え、移動用の馬も用意してくれた。
馬の名前はオリオンという。葦毛の性格の優しそうな馬だ。体格もかなり立派で僕たち二人を乗せてもへっちゃらっぽい。
「乗馬なんて中学の時の体験学習ぶりかな」
麗華は言い、オリオンにまたがる。
運動神経抜群の彼女はあっという間に乗りこなしてしまう。
騎乗の麗華も絵になるな。
「さあ、燐太郎ものりな」
麗華は僕に手をのばす。僕はそれにつかまり、どうにかして麗華の後ろに乗る。
「ほら、落ちないようにしっかりつかまりなよ」
麗華の言う通り、僕は彼女の背中に手をまわし、ぎゅっとつかまる。
「そんなんじゃ、落ちるよ。もっとしっかりつかまってよ」
仕方ない、落馬して怪我するのもいやだから僕は力いっぱい抱きついた。
そうして、僕は気づいた。
なんとあの超巨乳の下部分すなわち下乳が僕の腕に当たっている。オリオンが歩く度にボヨンボヨンと揺れている。ああっなんて温かくて、柔らかくて、気持ちいいんだ。癖になりそう。
ハンナとルイザは僕たちを城門近くまで見送ってくれた。
「騎士さま、どうかご武運を‼️」
ハンナは大声で僕たちを送り出してくれた。
二人は大きく手を振る。
僕たちも手を振り、それに答える。
「いってきます!!」
僕は手を振る二人にそう答えた。
城門を出ると門番をしている兵士が僕たちに声をかけてきた。
「どちらにいかれるのですか」
それはあのそばかすの衛兵だった。
彼女の話では、経験が浅いため交易の街ケイの奪還作戦に参加しなかったという。
「だれ、あの娘」
その麗華の声は氷みたいに冷たい。どうしたんだろう。
あの娘は王宮で知り合ったと説明した。そう言えば名前をしらないや。
「そっ」
そっけなく麗華は言う。
僕はそばかすの彼女に商人ギルドからゴブリン討伐を依頼され、そのために王都を出るのだと説明した。
「そうですか、どうぞご無事で」
そばかすの少女がペコリと頭を下げる。
サイズのあっていない鉄兜がゆれてかわいらしい。
そばかすの彼女に返事をしようとしたが、麗華がオリオンを走らせてしまった。
急に走らせたため、落ちそうになったのでまた力いっぱい抱きつく。
見上げる麗華の顔は何故か微笑んでいた。
ハンナの説明ではヨークの村は王都キャメロンから南に一日ほど馬で走った所にあるという。さらに南下するとあの交易の街ケイがあるとのことだった。
石畳の街道は整備する人間がいないためだろうか所々石がはがれている。
麗華は器用にできるだけ整ったところをオリオンに走らせる。
天才的な騎馬術と言える。本当にほぼ未経験者だろうかという手綱さばきだ。
一時間ほど馬を走らせただろうか、街道の左右から何か嫌な気配が近づいてきた。
あれ、視界がおかしい。
視界の左端にこの当たりの地形が浮かぶ。
街道であろうところの左右から赤い点滅が多数浮かんでいる。
これはオーディンの義眼の力だろうか。
サングラスを外すとただの風景だ。かけ直すと
「地図職人」と「監視人」の称号を獲得しました。
視界から文字が映り、直ぐに消える。
なんだろ、称号って……。
それは疑問だったがそれどころではなくなった。
「来たよ」
短く言い、麗華はオリオンを降りる。
馬上ひとりになった僕はオリオンに必死につかまる。
周囲に緑色の肌をした小汚い小人が集まってくる。
身長は120センチメートルほどだろうか。
小柄で痩せていて、濁った黄色の目をしている。それぞれ、短剣や弓矢、槍を装備している。そのどれもが錆びで汚れている。ギギギッと意味不明の言葉を発している。
種族ゴブリン、レベル12。
戦闘力も魔力もそれほどない。やや素早さが高いといったところか。
一匹一匹はたいしたこと無さそうだが、集団での戦闘が得意だとハンナは言っていた。
その性格は狡猾で残酷だと。
直ぐに短剣を持ったゴブリン一匹が麗華めがけて飛びかかってきた。
麗華は冷静に竜剣ジークフリードを抜き放つ。刃渡り一メートル強の大剣である。
それを軽々とふりあげると一息でそのゴブリンめがけて斬りつけた。
ゴブリンは脳天から股間にかけて真っ二つにされ、鮮血を吹き上げながら絶命した。
「さあゴブリン討伐の始まりだよ」
麗華は宣言した。
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