第10話 残る理由

 それは夢のような光景だった。

 振り向くとあの麗しの鷹峰麗華が立っていたのだ。

 鷹峰麗華は胸の部分は革鎧でつつみ、手足にだけ鉄鎧を装備していた。

 鎧の下は麻の服のようだ。ぴったりとした服のデザインで彼女のスタイルの良さが際立って見える。

 あふれんばかりのボリュームの胸がビキニタイプの革鎧によってしめつけられ、なんだか苦しそうにも見える。なんせJカップはあるらしいからね。


 聖騎士レイカ

 レベル22

 戦闘力に素早さが桁外れに高い。その代わりというか魔力はほぼないに等しい。

 完全に近接戦闘むきと言えるだろう。

 B112、W76、H106。

 うわっこれはすごいや。僕は感動すら覚えた。大きい大きいと思っていたけどこれほどとは。鷹峰麗華を計るのにセンチメートルなどというまどろっこしい単位はいらない。

 彼女にはメートルこそふさわしい。

 僕は何を言ってあるんだろう。


「で、でもどうしてさ?」 

 僕は訊かずにはいられない。


「まあいろいろあってさ。あいつらことあるごとに少年を馬鹿にしてさ。役立たずだの無価値だの好き勝手言って。それに奪還作戦にしてももう少し星霊器を使えるようになってからの方がいいんじゃないかって言ったんだけどね」

 鷹峰麗華はあきれながら言う。


 七人の星たちセブンスターズも一枚岩ではなかったということか。

それにあの鷹峰麗華が僕のことに怒って、きら星のような仲間たちと別れるまでにいたったなどうれしすぎる。

「だから私はあいつらと別れて少年と行動を共にしたいんだけどいいかな」

 鷹峰麗華は訊く。

 僕のことをじっとみつめる。

 そのキラキラの青色の瞳に吸い込まれそうだ


 もちろん、決まってるじゃないか。

 OKに決まってるじゃないか。

 承諾一択しかない。

 鷹峰麗華を断る理由なんか一ミリもない。

 なんのために異世界に来たっていうんだよ。



「も、もちろんだよ」

 思わず声が甲高くなる。

 ダメだな、コミ障のオタクは……。とくに女子とまともに会話するのは妹の理緒ぐらいだから。


「そうか、よかったよ。よろしくな少年。いや、これからは燐太郎って呼んでいいかな」

 その後、ごくごく小さな声で言っちゃったというのが聞こえる。


「ええ、それはもちろん」

 またもや上ずった声で答えてしまう。

 下の名前で呼ばれてかなり嬉しい。なんだか距離が縮まった気がする。


「それじゃあ、私のことも麗華って呼んでくれないかな」

 鷹峰麗華は言う。

「わかったよ、鷹峰さん」

 鷹峰麗華は首を横にふる。

「麗華さん……」

 妹以外の女子の名前なんか呼んだことないので緊張してしまう。

 またもや鷹峰麗華は首を横にふる。

「れ、麗華……」

 思いきって言う。あの憧れの鷹峰麗華を下の名前で呼んでしまった。

「あらためてよろしく、燐太郎」

 満面の笑みで鷹峰麗華は言った。



「あらあら誰だい、この別嬪さんは?」

ルイザが進軍パレードの見学から戻ってきた。大きな胸を揺らすルイザを見て、麗華の顔から笑みが消える。

「誰、この人……」

何か麗華の声が冷たいな。

「この人はルイザさん。僕がお世話になっている宿屋の女将さんだよ」

僕はルイザを紹介した。


麗華はその特大ロケットおっぱいの前で腕を組みルイザの前に立つ。

ルイザも両手を前で組み、巨乳を押し上げる。

二人はおっぱいとおっぱいがぶつかるほど近づく。

「私の燐太郎がどうもお世話になりまして」

麗華は歯ぎしりしながら言う。

「いえいえ、私がいろいろお世話してあげましてよ。いろいろね」

ルイザはいろいろの所に強くイントネーションをつけた。


なんだか、二人は険悪だな。



「まあまあ、二人ともお腹空いたしお昼にしようよ」

僕は二人に提案する。


「そうね、燐太郎。一緒に食べよう」

急に笑顔に変わり麗華が言った。


「いいね、近くに旨い店があるんだ。そこに行こう」

ルイザも賛成してくれた。

進軍パレードを見終わった僕たちは白兎亭という食堂に入った。

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