第2話 七人の星たち

 県立白鈴高等学校。

 それが僕が通う高校の名前だ。

 偏差値は一応進学校の分類に属している。

 なによりも特徴的なのはその校風だ。

 その校風は生徒の自主性と独立心を一番に重んじ、そのため校則はかなりゆるい。

 赤点さえとらなければ、あと倫理的に恥ずべき行為でなければ教師たちはとくになにもいわない。とはいえ、僕が去年遭遇した事件のようなものがあるので絶対とはいいきれないが。

 それもあの正義の味方である鷹峰麗華が生徒会長になってからいじめなんかはめっきりなくなった。それは彼女の腕力もさることながら、カリスマ性によるものが大きかった。

 僕のように鷹峰麗華に救われたものは多く、皆、彼女を支持したからである。

 それに付け加え、七人の星たちセブンスターズとあだ名される生徒たちが彼女の支持にまわったことも大きな要因である。

 その七人の星たちセブンスターズとは結城涼、羽柴マリア、本田正勝、渡辺蓮、石川咲夜、真田雪そしてあの鷹峰麗華をふくめた七人のことを指す。

 皆、学業優秀、容姿端麗な生徒たちであこがれのまとであった。

 そんな彼女、彼らが生徒会長の支持を表明したのであからさまに抵抗するものはいなくなった。



「また手にはいりやしたよ、和久さん」

 げへへとわかりやすい下品な笑い声で僕に声をかけるのは写真部の篠山だった。彼はスマホの画面を僕にみせる。

 そこにはあの鷹峰麗華の麗しい姿が写されていた。

 それは彼が生徒会広報の作成にかかわったときに手にいれたものだということだ。

 篠山は密かな恋心を抱く僕にこうして写真や動画を提供してくれる。

「いつもすまないな」

 僕は彼に礼をいう。

「いいってことですよ。ですがこいつは個人でだけ楽しんでくださいよ」

 篠山は僕に念を押す。

「ああ、わかっているよ」

 僕は答え、その画像データを転送してもらう。

「じゃあ、またアニメ研究会のヘルプの件よろしくお願いしますよ」

 そう言い、篠山は去っていった。

 

 コミュニケーション能力に乏しい僕ではあったが鷹峰麗華に関しては別であった。昔から手先だけは器用でイラストやプラモデルを作るのが好きだった僕はアニメ研究会や漫画研究会への応援を条件に篠山に鷹峰麗華の画像や動画をもらっていた。篠山にもそれらの部活へ貸しができるということで僕たちはいわばウインウインの関係といえた。健全とはいえないが。

 鷹峰麗華との出会いがよくもわるくも僕を変化させたといっていいかもしれいない。



 自宅に戻り、僕は篠山からもらった画像を一人でながめ、楽しんでいた。

 ああ、それにしても鷹峰麗華は本当に美しい。

 とくにあのボリュームたっぷりのおっぱいがたまらない。それにあの長身故の手足の長さ。一度でいいからあの手に抱かれてみたい。彼女のその神々しい姿はまるで北欧神話のヴァルキリーかギリシャ神話のアテナのようだ。


 僕がソファーでニヤニヤしていると妹の理緒が声をかける。

「なに、ニヤニヤしているのよ、気持ち悪い。お兄ちゃん、ごはんできたわよ」

 ツインテールの美少女、我が妹が言う。

 ひとつ下の理緒は僕と違い、社交性が高く、友人も多い。

 明るく、ほがらかな性格をしている。

 しかもなかなかかわいい顔立ちをしている。無論、あの鷹峰麗香に遠くおよばないが。


 晩御飯を食べ終わり、僕は風呂に入る。

 風呂をでてさっぱりした僕は、パジャマ用のスエットに着替える。

 宿題と明日の予習を終え、僕はベッドに横たわる。

 いつもの日課で篠山にもらった鷹峰麗華の画像をまた眺める。

 彼女の天才的に美しい容姿は何度見てもあきることがない。

 ついつい胸元に視線がいく。

 よくよく目をこらすと制服のボタンの隙間から胸の谷間が見える。

 それを見て、一人、悦に入り僕は眠りにつくのだった。

 



 気がつくと僕は夕日の中、近所の川沿いの道を歩いていた。

 そうするとどうしたことだろうか、一人の人物が僕の方に近づいてくる。

 その人は黒いワンピースを着ていた。

 髪の毛も真っ黒だ。ちょっと重いぐらいの暗さだ。

 どうやら女性のようだ。

 胸のふくらみでそうだとわかる。

「やあ、和久燐太郎君。はじめまして」

 その女性はそう言った。

 その女の人の目は蛇のように真っ赤であった。


 

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