24 やっぱりぼんやりな日々
現在の生徒会執行部は、運動会がほぼ最後の仕事らしい。生徒会役員選挙が告示され、立候補者が募られた。立候補資格者は2年生、任期は1年間。運動会の興奮の余韻が残る中、各クラス委員には「選挙管理委員会」という役名が上乗せされた。「おれはもう何がなんだかわからん」というのが、多忙をきわめる
遠足は、隣県の遊園地だった。1クラスで1台の貸切バスに乗って行き、後は思う存分遊ぶ。自宅から気軽に行けるところに遊園地がない立地に住んでいるので、みんな大はしゃぎで遊び回る。
そして中間試験である。
帰宅した陽佑は、とりあえず今日の宿題で気合いを入れ直そうと考えた。リビングから持ってきたスマホをベッドに放り出す。帰宅してから夜の9時までは手元に置いてよいことになっている。数学の問題集とノートを取り出し、授業で指定されたページの問題を解きにかかった。問題そのものは難しいとは思わない。だがあまりにもうっかりミスが多いことは、数学教師にもよく指摘されるところだった。
残り2問、というあたりで、スマホが短く鳴った。通信アプリで連城が、同じく数学の宿題についてヘルプを求めてきたようだ。
『問4できた?』
陽佑はちらっとのぞきこんで、手早く返信した。
「できたと思う」
『ヒントおせーて(スタンプ)』
それでも、解答をまるまる聞き出そうとはしないところに真面目さがあるのだろう。陽佑はページをめくって問4を確かめ、解き方を頭の中でまとめてから返信した。他人に教えるという行為は、ちょっとした頭のトレーニングになる気がする。
「……そこまでバラしてから、公式に代入すればいい」
実践しているのか、既読がついてからしばらくの間が流れた。陽佑は残り2問を解き終わった。
『おお、なるほど。わかった。あとはこいつを約分すればいいのな。多謝(スタンプ)』
……約分? 嫌な気がして、陽佑は再度、自分のノートを読み返した。
「げ、約分忘れてた。あぶねえ。サンキュ」
『今ならセーフ』
陽佑は重い吐息を机にぶつけて、頬杖からずるずると顔を滑らせた。こういうところがうっかりなんだよな、俺は。この性質って、治せるのだろうか。はなはだ心もとない陽佑であった。
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