2話 ピンチ?
「うぅ……いったぁ……」
転生した時、私は空中にいた。チート能力で空を飛ぶ、なんてことはなく、そのまま為す術なく木に突っ込んだ。
「これが異世界転移? 転移早々落下して、お尻を痛めているこの状況が? 認めない。私は絶対に認めない……」
っていうか転移したら普通、ファンタジーな街並みが広がってるんじゃないの? いきなりこんな森のど真ん中でスタートします?
「ギリギリ日本にもあるでしょこんな場所……。」
私を囲んでいるのは馬車でもエルフでも武器屋でも無く、土と草に、木と葉っぱ。つまり森の中。
「とりあえず、街を目指そう……。」
ここで座っていても始まらない。とりあえず街へ向かおう。魔物がいてもたぶん大丈夫。私にはあの神様からもらったチート能力がある……はず。
「とはいえ、どこなのここ……。」
『ココハ、ハニーノ森ノ中心部デス。』
「…………えっ?」
えっ、怖い何今の。周りに人いないよね? ていうか、脳に直接語りかけてきたような……?
「えーっと、どちら様なのでしょうか」
『……? ワタシデスカ?』
そりゃそうだろっと、ツッコみたくなる気持ちは今は抑えて。
「うん。私の脳内で喋ってるあなた。」
『……ワタシハ、異世界転生者サポートシステム。インゲージ・テリーヌ、ト呼バレテイマス』
あーそういうことね完全に理解した。
「私の第1のチート能力。ということでよろしいですか……?」
『ハイ』
きた。ついに始まる。私の物語が。
「じゃあ早速なんだけど……ここから一番近い街まで転移させて!」
「……スミマセン。ヨクワカリマセン」
えっ……? あ、いくらなんでも「転移しろ!」はやりすぎなのかな。
「えっと、じゃあ……ここから一番近い街の場所を教えて!」
『スミマセン。ヨクワカリマセン。』
えっ……?
「あの、この状況をなんとか打破したいんですけど」
『スミマセン。アナタガ現在ノ状況ヲ自力デ解決スル方法ガ見ツカリマセンデシタ』
えっ、じゃあこのサポートシステムはなんのためについてるの? そもそもカタコトすぎてすごい聞きづらいんですけど? 転移して数分で、自分の能力に不満だらけなんですけど!?
「っていうか『解決方法が無い』って、本当に言って……ん?」
インなんとかシステムに今の発言を問い詰めようとした矢先、後ろの方の草むらからカサカサ、という音が聞こえてくる。
「ひぇっ……もしかしてま、魔物……?」
まずい。非常にまずい。今の私は戦闘能力ゼロ。転生前と変わらない一般人。
「いやぁさすがに? ここがターニングポイントなんですよね〜? ほら、そろそろ目覚めてもいいんですよチート能力さん?」
カサッ、カサッと音は着実に近づいてくる。
「ほら、え〜っと……。メラ! エアロ! えっとえっと、波動拳! ラスターカノン! 邪王炎殺うんたらかんたら!」
とりあえず知ってる技を言いまくりながら、腕を振り回す。
……当然なにも起きない。
そんなことをしている内に、音はすぐ目の前まで近づいてきている。そして、その姿を露にしようとしていた。
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