幼なじみ
「わかりやすすぎ」
「なんだよ?」
「嬉しそうにしちゃって」
「そりゃあ画材屋に行くから当然だろ」
「はあ」
「なんだよ?」
「私たち何年幼なじみやってると思ってんのよ?」
「十年そこら」
「そう。十二年付き合ってる私にも嘘をつくわけ?」
「嘘って」
「そりゃあ、吉斗とゆえかをくっつけたキューピッドには言いにくいかもしれないけど」
「だからなんだよ?」
「吉斗は恋人がいるし、好きになった相手は六年生とは言え小学生だし」
「………気のせいだし」
「気のせいですか」
「そうだよ気のせい。頬を染めて、目を潤ませて輝かせて、俺の絵を言葉をなくすほど感激しちゃってくれちゃってたから、嬉しくて。ああ、すげえ嬉しくて。だから。それだけだよ。嬉しかっただけだ」
「つまり強く心を掴まれちゃったと?」
「おーまーえーなー」
「吉斗。私はさ、幸せになってほしいわけよ。吉斗にも。ゆえかにも」
「幸せだし、ゆえかは俺が幸せにするし」
「本当に?」
「ああ」
「ならいいけど。さ。吉斗」
「なんだよもう」
「恋人がいても、結婚してても、恋に落ちるのは悪いことじゃないんだよ。悪いのは、不誠実な対応をとること。だよ」
「おまえ何歳だよ?」
「同じ十五歳よ」
「俺が浮気をするってか?」
「するわけないじゃない」
「そりゃあどうも」
「ねえ」
「ん」
「んーん。やっぱ、いい。時間が必要な時もあるわよね。いろいろ」
「なんだよ」
「ん。ただ、私は責めないってことだけ覚えててくれればいいわ。吉斗が考えて。一生懸命考えて出した答えなら。背中をバンバン叩くわ」
「かのんは俺に甘いよな。かなり」
「そりゃあ、最初は弟のつもりで接しちゃったから。私よりすんごく小さかったし、可愛かったし」
「かのんがでかかっただけだし」
「まあね。今も、だけど」
「そのうち追い抜くっての」
「ふふん。背を追い抜いたって私には追いつけないわよ」
「すぐに追い抜くわ」
「まあたーのーしーみー」
「言ってろ」
「ふふ。ほら、入るわよ」
「わかってる」
(2022.6.3)
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