第3話 転生 1

『スキル:英雄ヒーローを取得しました』


あ?誰だ?

俺がヒーロー?

舐めてんのか?

俺は妹しか、いや、誰も守れないクズだ。

妹を置いて、死んでしまった。


『スキル効力の説明:このスキルを行使した際の対象は、誰でも全員魅了することが可能。パッシブスキルとして、幸運クローバーがあり、この能力は自分が行う行動全てが幸運に包まれる。ただし、それは自己完結出来るものに限る』



は?

煽ってんのか?

誰かは知らないが。

ん?


異変を感じたのはこの辺からだった。


スンスン。


ん?なんやらかいい匂いがする。

そして体。痛みが全くない。

ガヤガヤしている人混みの声がする。



「んー?」


うっせぇな。

今日は祭りかなんかか?


「っせぇなぁ、満員電車か?」


目を開けて、光を取り入れ景色を見ると、そこは見知らぬ世界だった。


「.........ふぁ?」


行き交う人々は活気に満ち溢れ、道端には出店が出揃っている。

いかにも東南アジアの市場のような感じだ。


.........夢か?


思いっきり頬をつねる。

痛い、普通に痛い。

ん?

痛いってことはこれは現実?


意味がわからない。

I Don't understand、、、、英語で訳すとこうだっけ?

あ、こんなこと考えてる場合じゃないわ。


意味わからん。

ここ、どこだよ?


とりあえずもう一度目を瞑って開ける。

景色は変わらない。

うーん。

どゆこと?


頭を搔こうと頭に手を置くと何かものが落ちる。


「ステいっ!!!ステイ!!!」


慌てて飛びつく。

アブねぇ〜.........危うく落とすとこだったぜ。

これは、バッジだ。

しかも特別な.........だ。

このバッジは妹が作ったものだ!!

しかも『お兄ちゃん大好き!!』って書いてあるのだ!!

も〜お兄ちゃんも大好き!!朱里たん!!


.........コホン。

べ、別にシスコンってわけじゃねぇからな?



とりあえず、この通りを歩いてみるか。

この大通りっぽい場所はめっちゃくちゃ人混みが凝っている。

出店も出揃っているので、まぁ、情報かなんかもあるかも知んないし。

ここでずっと突っ立ってる訳にも行かないしな。

なのでとりあえず、進んでみるか。


.........

.....

..


あれから1時間ほどウロウロしていたが、なんにも分からずじまいだ。

中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みで、歩くだけで世界遺産を探索してる気分になれた、まぁ要するに楽しかったってことだ。


そして、なんかいるし。


馬?????

嫌でも、体は普通の人間だし。

馬ガオ人間?

アサガオみたいだな。

とにかくなんなんだコイツは?


てか、なんかこっち来てるんですけど?

え?怖!

馬の顔ってあんなに怖かったか!?


「なんだ?あんた、こっち見てきて」


俺の視線に気づいて、こっちに来たようだ。

とりあえず謝っとくか。

「あ、あぁすまん、ところであれは何やってんだ?」


何か、木造の荷車から持ち運んでたようなので、一応聞いておく。

何か分かるかも知んねぇから。


「ああ、これか?これは人参だ」

「ん?お前の餌か?」

「は?馬と一緒にすんな」


いやお前馬じゃねぇか!!


「え?人間?」


無意識に俺はそう聞いていた。


「あ?俺は馬人族だ」

「.........ということは鳥人族もいんのか?」

「そりゃそうだろ。お前、亜人族見た事ねぇのか?」


亜人族ってあれだろ?

エルフとか、ドワーフとか.........有名だよなぁ。

でも、なんで馬??????

解せぬ。


「お前、もしかして外国人か?スフェリアムに来るのは初めてか」


そう言われて、視線を向けると馬が説明を始める。

見れば見るほど異様な光景だ。


「ここスフェリアムは、アンド王国の首都だ。ここには馬人族といった多種多様な民族種族が集まるんだ。故に、ものすごく発展しててだな、商工業の中心地でもあり、政治の中心地でもあるんだ」


なるほどぉ.........

江戸時代で言うと江戸と大阪が合体した場所みたいな感じか。

どうりで人が多いわけだ。

ここで、重要なことを聞いておこう。


「アメリカって知ってる?」

「あめりか?なんだそりゃ?聞いたこともねぇな」


これで決定だな。

俺は間違いなく死んだ。

死んで小説の中の主人公のように転生して、この世界に降り立ったのか。

つまり、ここは異世界だ。

元の世界の住民がアメリカを知らないわけない。

しかも、馬人族のように多種多様な民族種族がいる、そのことはここが異世界であることの証明に他ならないしな。


はぁ.........

俺は正真正銘、異世界転生を果たしたのだった。


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