第十話 設定された結末

一般病棟への移動日が決まった。

明日の午後になるらしい。急な話だ。


病院の都合により予定より大幅に

ICUに滞在したけどようやく

“普通の世界“に帰る事が出来る。


一般病棟なら友人がお見舞いに

来てくれるかもしれないし、

何よりスマホを触る事が出来る。


数日ツイートが途絶えただけで周りが本気で

心配してくるレベルのネットジャンキーな

俺にとってはまさに救済だった。


とても喜ばしい事ではあるけれど

一つだけ気になる事がある。彼女の事だ。


非日常感が強く、人気のないICUだからこそ

俺は彼女に会う事が出来るのだろうと感じていた。


おそらく、ここから出たらもう彼女とは会えない。

悪夢から俺を救ってくれた彼女にお礼を言いたいし

嫌な気持ちにさせてしまった事を謝りたい。


しかし、俺は彼女に会いに行く方法を知らない。

どうしたら良いのだろうか…


その時、ふと思った。


彼女に会う方法はわからなくとも

会えるタイミングを俺は知っている。


それは夢と現実が混同するあの境目の無い世界。

あそこで彼女を探すのは可能かもしれない。


しかし、それは魑魅魍魎が渦巻く

あの世界に自ら飛び込む事になる。

正直、気が進まない。最悪だ。

悪夢に好き好んで飛び込むバカはいない。

しかし、彼女に会う可能性が少しでも上がるなら…!


俺は腹をくくった。

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