第十一話 悪夢の中へ

今日3回目のリハビリが終わり、

晩御飯までの自由時間が出来た。

ここから彼女に会うための作戦開始だ。


先に言った通り俺は睡眠麻痺を持っている。

入眠時幻覚やいわゆる金縛りは

毎日とまでは言わないが不定期にやってくる。


俺に出来るのは意識してこれらを発生させ、

夢と現実の境目に長時間滞在する事ぐらいだ。


分の悪い賭けなのはわかっているが

唯一俺が出来る事だから仕方ない。


その為に俺はまず昼寝をとった。

睡眠バランスを崩して夜の睡眠の質を落とし

なるべく長く睡眠障害を起こす為だ。


そうして昼寝を取った後、

身体と頭のバランスも崩す為、

消灯まで身体を動かし疲労を溜めた。


あとはなるべく何も考えず眠れば良いだけだ。

眠いけど眠れない。眠れないけど眠ってしまう。

その状態に持ち込めばもしかしたら…


俺は人気のない真っ暗な部屋でそっと目をつぶった。


……

………


何か嫌な声が聞こえてくる。


……

………


身体が何かの奥底に引きずり込まれる。


……

………


色々な妄想が襲ってくる。

歪な悪夢を見せられている。息が苦しい。

これは…完全に境目に入った。

よし。ここからが本番だ。


俺はおぞましいモノに包まれながら

彼女の声を探す、姿を探す、気配を探る。

悪夢が俺の耳を遮る。集中を乱す。目の前が暗くなる。


時間はそれほど残っていない。

俺は必死に彼女を探す。


………あっ。


雑音の中、微かに少女の泣いている声が聞こえた。


どこだ。どこだ。どこだ。

泣き声のする場所を必死で探す。


どこだ。どこだ。…そこか!

遠くに僅かな光が見える。


間違いない。光の向こうに彼女がいる!

俺は光の中に飛び込もうとするが

身体は動かない。動かし方を知らない。

しかし、それでも俺は諦めない。


そして、試行錯誤を繰り返して

少しずつ移動の仕方がわかってきた。


光が大きくなっていく。

ようやく彼女に会える。


早く会いたい。

彼女に会って俺は…!


……


光の中に飛び込んだ時、

俺の視界に入ったのは知らない病院の病室、

そしてベッドで寝ている彼女だった。

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