荒羽伊代-あらばねいよ-は亡くなりました

御國アサガオ

第1話

荒羽伊代は高校2年生で、いっつも明るくて優しくて男女問わず人気な子だった。

成績はまぁ普通くらいでどの教科も平均点を取るくらいかな、国語だけは得意だったな。

将来の夢は……なんて言ってたっけ、でもちゃんと夢あるんだなって感心した記憶がある。

いつも明るくて未来を見てた伊代……それがなんで、なんで。

「荒羽伊代さんは亡くなりました。」

現実感がなかった。

せんせーがやたら神妙な顔付きからそう言い放ったことだけ覚えてる、今日なんの授業やったとか昼飯何食ったかとか友達と何喋ったとか全然覚えてない。

私だけ、三河麻弥みかわまやだけが時間に取り残されてた、三河麻弥はずっと朝のホームルームにいる、そして言われるんだ。

「荒羽伊代さんは亡くなりました。」

大好きな伊代が死んだ、私の親友の荒羽伊代。

今日は一度も伊代と話してない、アプリのトークも既読になんない、私の今日に伊代はいなかった。

「伊代の家に行くよ」

授業の終わりに教室で話しかけられた。

出雲祥子いづもしょうこ、私の親友のひとりでこの子も伊代と仲が良かった。

成績優秀な優等生で本来なら私みたいな毛先を赤で染めてるワルとは関わりになることなかった子だ。

この子とは伊代と関わってく中で知り合って仲良くなった、最初はせんせーの使いっ走りのいい子ちゃんかと思ったけど話しててわりと面白い子だって知った。私と同じでゴスメタル好きなのはいいところだね。

「けーさつがいっぱいいるんじゃないの?近寄れるかな」

「とにかく行ってみるのよ、先生は亡くなった理由言ってないし……」

伊代が亡くなった理由をせんせーは言わなかった。

けど交通事故なら多分言うだろうし、昨日までは普通に元気だったから病気でもない、殺人事件とかなら私たち多分登校出来てないだろうからそうじゃない。

自殺。

私の脳で辿り着く結論はこれだった。

同級生が自殺した、はあまりにも強烈すぎるし後追いを防ぐために言わないこともあるってニュースで見た気がする。

「そうっすよ、だめなら諦めて帰ればいいっす」

祥子と話してる途中で現れたのは氷川ひかわみちる。

祥子が頭脳派ならこの子は肉体派、スポーツ得意な子。

この子もまぁ伊代がいなければ関わらなかったタイプかな、暑苦しいかと思ってたけど話してみたらわりと面白い子だった、あとこの子もゴスメタル好き。

「学校でも噂になってるっす伊代ちゃんが自殺したって……」

みちるはいつも元気なタイプなんだけど伊予が亡くなったってのはさすがにショックだったのかどことなく元気が無い口調。

「とにかく行きましょうよ伊代の家、私は真相が知りたいわ」

対して普段はインドアな祥子はやたらと活発的だった。

2人ともいつもと違ってるし、2人から見ても今日の私は違って見えると思う、それだけ伊代の死がショックなんだ。

「私も知りたい、伊代がなんで死んだのか」

私がそう言って2人の顔を見た。

当然でしょって顔してたから私たちはすぐに伊代の家に向かった。


伊代の家へは歩いて10分くらい、私たち4人グループで帰る時は伊代が1番最初に家に着く。だから私たちは伊代の家へは特に迷わずに着くことが出来た。

「うわぁ……ドラマみたいだ」

開口一番に私が言う。それ以上の表現ができないくらい刑事ドラマみたいな光景だった。

黄色の例のテープ、2台のパトカーが伊代の前の家に停まってた。

「こんなふうになってるなんて気付かなかったわね」

祥子は意外そうだ。

無理もない学校から近いんだから誰か気付いてそうなものなのに朝の時点ではそれに気付いた生徒はいなかった。

「駅とは反対方向っすからね、こっち方面に帰るのあたし達くらいじゃないすか」

みちるはそりゃそうだという風だった。

私たちの学校はほとんどの生徒が電車通学だからそれもそうだ、伊代の家の方向、私たちの帰る方向はちらほら民家があるくらいの閑散とした土地に向かうので生徒は近寄ることは無いし、そこから通学する生徒は相当少ない。

「私が来る時は全然けーさつの影も形もなかったんだけどな」

私たちは帰るのは一緒だが通学する時間が違う。

みちるは朝練で6:30くらいには学校にいる、祥子も勉強のために7:20くらいには学校にいる、伊代は他の普通の生徒たちと同じくらいのタイミングの8:00くらい。

ちなみに私は朝が死ぬほど弱いので遅刻間際の8:30くらいにようやく学校着くらい、8:20くらいに伊代の家を通りかかったはずだが事件とか何が起こってるようには感じなかった。

そんな話をしていると

「君たちなに?この辺の学校の子だよね」

警察官に話しかけられた。

「そうだよ、私たち伊代の友達」

私がそう言うと警察官は一瞬本当か?という顔をする。

無理もない、いかにも優等生、いかにもスポーツ少女、いかにも不良。

こんな3人が揃えば変にも思うだろう。

「私たち伊代が亡くなったと聞いて気になって来てしまいました。」

「そうっす、捜査とかの邪魔にならないようにするのでいさせて貰えないっすか。」

ほぼ同時に祥子とみちるも言う。

「いや僕らも君たちに特に話せることとかないし、普通に捜査に支障出るから出来れば帰ってもらいたいかな」

警察官は素っ気なく言った。

「……君たちの心中は察するけどさ、だからこそ僕らに任せてくれないかな、僕らが真相を解き明かすから、ね」

最後の方はちょっと優しさがあったな。多少なりとも気を遣ってくれたみたいだ。

「そ、そうっすよね!すいません、帰るっす」

みちるが慌てて言う、こいつ警察官にびびってるな?

「さぁ帰るっすよ失礼しました!」

みちるがビシッと警察官にお辞儀をしてそそくさと小走りで去っていく、私と祥子も警察官によろしく伝えて去るのだった。


小走りでたどり着いた先は河川敷。

たまに4人集まって話してたところだ。

「結局なんにも分からなかったっす……」

みちるはしょんぼりしていた。

「そりゃ私たちただの女子高生だし仕方ないでしょ」

「どの道、伊代の家にいたところで何もわからなかったわね」

3人であーでもないこうでもないと話していた。

すると祥子が

「こうなれば最後の手段しかないわね」

と言い、カバンから1枚の紙を出した。

紙には上から鳥居、はいといいえ、そしてずらりとあいうえおかきくけこ……と書かれている。

「祥子ちゃんまさかとは思うっすけど……」

「まじ?今日これやんの」

私たち若干呆れ気味で言う。

出てしまった、優等生祥子の悪い癖。

「テーブル・ターニング、つまりこっくりさん……最後はやっぱりオカルトよね。」

出雲祥子の悪い癖とは”困った時はオカルトに頼る”、今回はこっくりさんを使うみたいだった。

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