深淵より、さらに深く

「んで、カプセルドに全面的に任せると。

 分かりやすいな」

 ドラゴが自艦ドラグーンのカプセルの中でそう言った。

『報酬も危険度も段違いです。熟慮じゅくりょを願います』

 今回の仕事は、最近辺境で発生している、『謎の侵略者』に関するものだった。

 鼻で笑うのは容易い。

 が、与太話よたばなしのような超技術・少数精鋭の集団であるなどはともかく、周辺宙域の被害が大きいのは事実だ。

「例のカッター。兵器コード名・『黒曜石こくようせき』、か。お前はどうみる?」

『推測の域は出ませんが、高出力のレーザーなどではなく、結論は不明としか答えられません』

「あらゆる兵器データに該当しない、ということか」

『肯定』

 膨大な兵器データに該当しないというのは、たしかに謎にすぎる。

 考えても仕方がないと、ドラゴは質問を変更する。

「ふむ。謎の侵略者。

 あいつらの正体については類推るいすいできるか?」

『様々な事情でアビスの管轄下を追われる、または自発的に出ていった人たちは存在しますが、もしかすると更に昔から離れた人種かもしれません』

「というと?」

『侵略者は、周辺宙域と最低限のコンタクトをした形跡すらありません。

 技術を隠し持っていただけでなく、近隣の宇宙からさらに遠く離れている人間の可能性があります』

「今になって、こちらと接触した理由はなんだろうな。それもこんな、攻撃的な形で」

『こちらの資源を求めているというのは安直でしょうか?』

 今度はドラグーンがこちらに聞き返してきた。

 ドラゴは少し考える。出たのはありきたりな結論だった。

「確かに、戦争をふっかける理由としては当然だな」

 例のアビスは可能ならば技術の鹵獲ろかくを求め、多額の報奨金を積み上げていた。

「鹵獲は二の次だ。

 まずは敵を仕留める。索敵、開始だ」

『了解』

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