センス光る表現力と重い世界観が紡ぐヒューマンドラマ

言葉遊びというのか、比喩や言い回しに類を見ないセンスがある。

重なる類語や縁語、似ているのに重ならない言葉が作り出す雰囲気は一級品かと。

才能のある作家というのはこういう物語を描くのかと、叩きつけられるような感覚があった。そして、それがとにかく心地がいい。

テーマは、web小説では見かけることのないレヴェルで重い、しかしそれを飛び越えてくるほどの魅せ方をしてくれる。
異世界ものや長いタイトルで物語を連想させる昨今のブームを全否定していくかのような、この作品の虜になることを僕は恥ずかしいとは思わない。

さらに言えば、昨今のブームに辟易してる人はもちろんだが、それらの作品を主に読んでいる方こそ読んでみるといいのかもしれない。
物語の真髄に触れる機会などそうそうないのだから。

主人公の少女を核に置きながら、彼女を取り巻く登場人物にスポットライトを当てて物語を展開していき、あたかも主人公が脇役に成り代わるかのような描き方も斬新でよかった。
歪な存在が、歪なまま物語が進んでいく。

読み手を選ぶ物語ではあるが、一読の価値は十分にあると断言できる。