48 守護神

 遅れてきた石田が、白夜の言葉の前にぴかぴかの板に触れた。  

 ぶぉん、と音が鳴り四角に青い光が灯った。

「……これ、多分スクリーンだよ、テレビ画面みたいな」

 今や青く輝く板、スクリーンに訳の分からない記号がつらつら並ぶ。そして小さな正方形の連なりが空中に現れた。

 もう白夜にも何だか判った。

「……つまりこれはタッチパネルのキーボードだな……封印……こんなメカメカしい物とは」

 意外な展開に白夜は呆れる。この世界は魔法があり怪物がいるファンタジー世界と思いこんでいた。なのにスクリーンとタッチパネルキーボード……つまりパソコンが出現するとは。

「多分、このコンピューターは異世界の物なんだよ。僕等みたいにこの世界とは違う場所から来たモノ……あるいはだから異世界の人間が必要だったのかな?」

 石田はぶつぶつと一人考え込んでいる。

「で? どう使うんだ? 俺にはさっきから出ている記号がさっぱり読めないが」

 考えるのを放棄したのか、立花が石田に尋ねた。そう、何でも翻訳機みたいだったエレクトラの指輪が機能していない。

「……それは……ぼくも」

「じゃあどうしようもないじゃない、ここまで来て……全くもうっ」

 真田が何で出来てるか判らない地面を蹴る。

「いいえ」片倉が静かに否定した。

「出来るわ……私達には魔法がある……確か、読めない文字を読む魔法があったわ」

「コンプリート・レターっ!」

 真田、石田、朧が同時に叫び、小西は不思議そうな表情になる。

「ソーサラー、ウィザード、ウォーロック、吟遊詩人が使える魔法だ」

 石田達は一言呟くと魔道書を取り出し、指で一つ一つ呪文をなぞり出す。

「あの~、らららはソーサラーだけど使えないんですけど?」

 みんな小西に構う時間がないようだ。

「またスルーかよ! まじむかつくっ」

「出来そうか?」

 恐る恐る訊ねる白夜に、真田、石田、朧、片倉はきつく目をつぶりながら答える。

「ちょっとまって! 今呪文を覚えるから」

「これ、いけそうじゃーん!」

 成田の表情が明るくなる。

 四人はそれぞれ魔法を唱えると、四つのコンピューターの前に立った。

「うん、判る……だけど少し時間がかかりそう」

「そうね、打ち込む文字が多すぎる」

 石田と片倉が眉を潜めるが、小早川は何度も強く頷いた。

「何時間だって待つ、それで元の世界に帰れるんだろ」

 白夜も含め誰もが首肯した。これまでの旅を思えばコンピューターを操作する時間なんて何でもない。

 だが一人、源白夜は決意する。

 ……これで封印を終えたら僕だけでもこの世界に残ろう。

 彼にはやることが残っている。放置されている本田と嶋の遺体を埋めて弔い、エルヴィデス城でアンデレの正体を明かし、黒咲達も探し……困難だろうが、斉藤も助ける。

 白夜は密かに唇を噛みしめた。

 ……待ってろよ……なんとかして……。

 彼の密かなは考えは突然鳴ったサイレンにより破られた。

 四人が空中に映し出されているキーボードに指を触れた瞬間だった。

「な、なんだよ? これ」 

 鳴り続ける耳障りな音に、小早川が首を巡らせた。

 瞬間、巨大な人型の何かが前触れもなく三年四組の前に出現した。

 顔がカメラのレンズみたいになっている金属の巨人だ。

「ロ、ボット?」

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