24 故郷

 女王シャーニナがなぜこうも手厚く遇してくれたか、それは彼等を遠巻きに見つめる徳川准だけには判った。

 彼は夜、シャーニナの私室に呼ばれこれまでの経緯を話していた。嘘を交えても彼女の鋭い目でバレると思い自分達が異世界から訪れた者だと、正直に告げた。

 シャーニナは最初は信じなかった。

 だが准は持っていたスマートフォンを彼女に渡し、何とか認められた。

 となるとシャーニナの興味は異世界の話に代わる。

「馬もいないのに車輪で走る鉄の塊! 空を飛ぶ鳥を模した鉄の乗り物! 鉄の棒の上を走る蛇のように長い箱!」

 シャーニナ女王は偉く感激し、エレクトラの遺言である「封印」にも興味を示した。

「……なるほどな、封印か」

 彼女は椅子から立ち上がると、すっかりと闇の帳が降りた窓の外を眺める。

「それは私も気にしていた……そもそも先の戦、混沌の勢力達は皆人間の脅威ではあったが、今まで軍隊になる程連帯しなかった、しかし混沌の勢力は事実、エルヴィデスを襲った、まさに軍のように色々な種族が連携して。しかも昨今はオーガーやトロール、オークなども人里にまで現れると聞く、確かにそちらの言は正しいのかも知れぬ……アークロードか……ならそちらは救世主だな」

 准は冗談を言われたのだと思った。だがシャーニナが大まじめだったと、仲間達に与えられた武具の数々で知る。

 余慶が続くのか三年四組は王族達の食事にも同席した。

 これには一悶着有った。

 小早川倫太郎だ。

 どうもこの世界はまだ食についての考え方が遅れているようで、彼等の前に出てきたのはアントルメと呼ばれる……簡単に記すと食材に色をつけたり、食材からワインが吹き出るように細工していたり、生きた鳥をパイに包んだ食べ物とどこかふざけているように見える料理だった。

「食べ物で遊ぶな」と幼いころから両親に厳しく躾られてきたらしい小早川は、怒りに顔を染め上げて席を立った。

 その後准が懸命になだめて彼を席に戻したが、その件以来小早川のシャーニナ達に対する心情は悪い。

 美しく可憐なカティア姫さえも手づかみで肉をとりかぶりつくのも、彼には理解できないようだ。

 ……確かにズレてるよな。

 准も認めてしまうのは、その後カティア姫が「戦勝記念のダンスパーティをしましょう」と嬉しそうに提案したからだ。

 事実、不思議な事態で怪物達との戦争には勝った。だが城だけではなく町にも被害……死傷者や生活している家を失った人々が出たのだ。

 思い出すのは街道の避難者の群れだ。

「戦勝」は無いだろう。

 勿論、徳川准はそれを口にはしない、今は厚遇されているが王様達の気分なんて判らない、明日は断頭台的な展開も考えられる。

 三年四組のリーダーとして皆を守るために、准は常に愛想笑いを浮かべ続けた。


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