23 新たなる装備

 馬の教練は次の日から始まった。

 場所は王宮のすぐ近くにある土の広場で、どうやら元々馬術の教練用に作ってあるらしく、厩舎や馬房も備えつけられていた。

 彼女自身の言ったとおり、シャーニナの選んだ馬は確かに気性が穏やかで乗りやすく、教える教師も手慣れていた。

 数日を経ずに、馬に慣れた者も出始めた。

 小西歌だ。

「………………………」

「……何だよその沈黙。むかつく、らららの才能が羨ましいか」

 彼女はどうしてか馬と心を通わせられるようで、あんなに嫌がっていたのに今では馬と仲良しだ。

 反対に源や力角は苦戦した。成田も思うようにいかず表情を曇らせている。

「馬の気持ちを知れ、落ちこぼれども」

「馬と同レベルの知能の小西だから出来るんだよー」

「あ? おい何か言ったか? 落ちこぼれ成田。らららの馬はお前を蹴りたいらしいぞ」

 それが午前。午後になると本田による剣の練習になる。

「ほら、打ち方が雑だ、それでは敵の弱点を捉えられない! 何休んでる嶋! お前はレイピアを使うんだろ、なら突きを覚えておけ」

 言を違わず、本田繋は厳しかった。

 新しい武器をシャーニナ女王から賜った皆は、それぞれの武器に慣れようと必死になり、本田はそれに答えるように鬼のような指導ぶりだ。 

「しっかし」短い休息を与えられた白夜は、息を整えつつ隣の深紅に話しかける。

「ショートソードからいきなりこれか」

 彼は幅広の剣ブロードソードを持ち上げる。切れ味はショーソードなどよりかなり上だが当然重い。腰に下げるサイズではあるがそれを帯刀するために下半身の鍛錬も行っていた。深紅が与えられたのはロングソードで、これは一メートルはある長剣であり、腰ではなく背中に背負う。立花はグラディウス二振りをもらい、何故か二刀流としての道を究めようとしている。本田は白夜と同じブロードソード、明智は女性だからか波刃型のレイピア、フランベルクを入手していた。

 皆、これまでの戦闘のお陰でそれなりの剣を操れるようにはなっていたが、慣れるまでの道は長そうだ。

 ただ力角は勧められた剣を断りウォーハンマーに拘った。だから彼には一回り大きな鋼鉄のウォーハンマーを持たされたが、それを木製バッドのようにぶんぶん振っている。 

 戦場にも出るシャーニナによれば、皆の戦い方を見て武器を決めたそうだが、何を基準にしたのかさっぱり判らない。

 武器が変わったのは戦士だけではない。レンジャーはコンポジットボウに加えてクロスボウ。密偵達はレイピアとメイルブレーカーと呼ばれる鎧を通す短剣を持たされ(実は後で判るのだが、それは毒を塗ると完成する武器だった)、魔法使い達は身を守る程度のダガー。聖職者達は鋼鉄のメイスが選ばれた。

 戦闘力に関して飛躍的な向上が図られたのは間違いない。使いこなせれば、だが。

 鎧も高価だろう物を着させられた。

 戦士達と聖職者には鉄と鎖帷子のプレートメイル。密偵とレンジャーは鉄の補強がされているレザーアーマー。魔法使い達はローブの下にアクトンと言う布鎧……見た目だけはもう騎士だ。

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