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「だ、ダメです! それだけはやめてください!」
「見たいですよ!」
「ダメだ、ダメ!」
「かわいいのよ、なんで?」
あたりまえでしょう! かわいいオレなんて、見せたくない!
「まだ、お巡りさんより先生のほうがチビちゃんだったのよ」
また、向こうでロウの肩が跳ねる。
「いや、いやいや! なんで写真なんかあるんですか!」
「こっそりね、横田さんがたまたま遊びにきてる日にね、撮ってくれたのよ。お店の秘蔵品」
なんだそれ聞いてない!
それなのに奥さんは誇らしげだ。
「秘蔵品、だから。すごくいい写真。どこにもだしてないよ。横田さんも」
横田さんは、サーフフォトの第一人者だ。海外でも名を知らないサーファーはいない。
横田さんのモデルになるならそれは名誉なことだけど…まだまだシャイな高校生男子に、撮るなら撮るっていってほしかった。
「だって、いったら撮らせてくれないでしょ」
「あたりまえです」
「はは」
柔らかい風がぬける。
「まだちょっと、肌寒い日だったな。さっむい年でさぁ、春も遅かった」
和さんの目が懐かしむように遠くを見る。
「平日の真昼間よ。ガラガラの店内でこの角っこの席座って、悦に入った顔でカフェラテ片手に、海、眺めちゃって」
「青さん、めちゃくちゃ、常連さんなんですね!」
無垢な目を丸くして感動してる博士くんの頭を、オーナーの節くれた手が優しくなでる。
あの手の重みを、オレも知っている。
だれがはなしかけてこようと顔を向けもしないオレの頭をただ笑って、あの大きな手で、いつもなでてくれた。
暖かくて、
重たくて、
心地よい。
「そうだよ」
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