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 「青さん! なまこ! おいしいですよ!」

 「いらない」

 「青さん!」

 「つか、」

 ふわふわアルコールが気持ちよくて、こんなときはつい余計な軽口を利いてみたくなる。

 「博士くん、なんで、ジンジャーエール? 飲めないの? オトナでしょ?」

 「なにをいってるんですか!」

 博士くんが小姑(見たことはないけど想像では)みたいな顔でピシャリとオレの、前髪をわざわざかきあげて、額を叩いてきた。


 えっ、えぇ⁉︎


 「なかなか大胆だ」

 愉快そうに和さんが笑う。いやいや、けっこう本気で痛い。

 「青さんが酔い潰れたら! だれが! 介抱するんですか!」


 あ、すみません…そうですね。そういえばいままでどうしてたんだろう。


 向こうでビクリ、と、ロウの肩が跳ねる。


 あぁ、そうだ。ふたりで一緒に酔い潰れて、気づいたら朝だったりしたわけだ。


 「頼もしいじゃない」

 「ハッ、なまいきだな」

 お返しに、軽く、やっぱりデコピンしてみる。デコピンなんてなん年ぶりか。

 「生意気⁉︎ いたっ! いたい! 青さん!」


 あは、泣きそうだ。


 しかし、思わぬ方向から逆襲が、


 「ヒロくん、先生こんなだけどさ、高校生のときなんかほっんと生意気なチンチクリンだったわけよ。いまも生意気だけどね? いつも英語なんか読んじゃって」

 「あはは、ウニの! ウニの論文!」

 「そう、ウニの。先生がこの店に通いはじめたのはまだ高校生のときで、」

 「へぇ、なっまいき!」

 「そう、生意気、」


 「……って、ちょっと、和さん!」

 あわてて身を起こす。突然、なにをはなしだすのか。


 「いいじゃないの。なっまいきなエリート面してさぁ、」


 いやいや、まったくよくない。

 彼はただの、ただのルームメイトだ、過去なんて、過去のはなしなんて、


 「店に入ってきたときはびっくりよ。鎌倉聖心の制服で。制服でよ⁉︎ この店は子どもが制服で来るような店じゃねぇんだよって、な?」

 「わはは!」


 あぁ、もうこれは聞くしかないやつか…諦めてチーズをつまむ。


 「しかもコーヒー飲めないもんだから、カフェラテなんてシレッとオーダーしちゃって。それからだよ? うちのメニューにカフェラテだしたの」

 「うわぁ…」


 ああぁ…


 「あら、かわいかったのよ。ほら先生、ちゃんと食べなきゃ」

 奥さんが楽しそうに、野菜やらバーガーやらを盛りに盛った皿を手にやってくる。

 「かわいかった⁉︎ 青さんが⁉︎」

 ちょっと失礼な反応じゃないだろうか、高校生のころからこんなおじさんなわけじゃない。

 「大人ぶった顔しちゃってね。女の子たちのあいだでいつも話題になってたわよ。写真見る?」


 しゃっ!

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