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もちろんこんなにたくさんの料理はオレたちだけで食べるもんじゃない。
mellowのスタッフ、常連サーファー、馴染みのアーティスト…海でつながる人々がいまこの灯りの中でゆるい時間を共有する。歓迎会やなにかはそのための格好の口実なのだ。
海霧にぼんやり浮かぶmellowな時間を、オレはいつもの席、海に張りだした一番奥の、一番小さな席から眺めていた。
いつもはコーヒーのマグがおかれているテーブルに、きょうは注文してもいないのにラムのチチ。
ロウはいつもと変わらず琥珀色のマイ・タイ。運転してきたのか霖くんはジンジャーエール。
なぜだか博士くんもジンジャーエール。
肉やサザエの焼ける音、香り、煙り。知った声の雑多な会話。下から聞こえてくるゆるい波の音。夏の夜、肌に纏わりつく湿った空気。すべてが心地いい。
ひとり、
ずっと ひとり。
こんなひとりが、好きだ。
ひとりでいるのに、暖かいなにかに包まれている。記憶の奥の方に巣くるなにかもすべて忘れて、安らぐ。
「先生、食べてないじゃない」
気がつくと料理の皿を手にしたオーナーと博士くんが、潮でいい加減傷んできたプラスチックの椅子を引きずってオレの向かいに移動してきていた。
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