13


 あぁ…


 「『青』て、ステキな名前ですね!」


 軽く眩暈がする。


 「ね? 下に降りれるみたいですよ?」


 それは知っているけど、オレは首をふった。オレには海が、青くは見えていなかった。


 『黒耀石』の瞳にはもう、海も空も、青くは見えていなかった。

 随分とむかし、雪の降る日に見た色のまま。どんなに季節が巡っても、


 海も空も、

 重たい鈍色にしか、

 見えなくなった。


 きっとむかしは見えていた。


 けど、どんな色をしていたのか、もう思い出すこともできなくて。


 だから光の波長の数字でしか、海の色を理解することができなかった。


 「降りてみましょう?」

 そう、彼が満面の笑みで顔を向けてきた気配がしたけど、オレは穏やかに凪いだ鈍色の海をぼんやり、眺めて…


 て、ちょ、っ!


 「すみません、そこの階段から、海にでれますか?」

 「いいよ、いいよ、滑るから気をつけてね」

 「はい!」


 和さん!


 「こんど、一緒にSUPでまわろうよ」

 「はい!」


 あ、ちょ、ちょっと! 危ないから…!


 「ぼく、ウニ探してきます!」


 メンドクサイ…この子…

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