第二章ー10 『昔の友だち』
⚫『昔の友だち』
南雲にはすでに『いい報告がある』と連絡を入れている。
放課後になると、クラスのみんなから「すごいな」と好意的な声をかけられた。
目立ちたいわけじゃないのだが、ちやほやされるとそりゃあ……
でもできれば早く、自分を信じて応援してくれた人と、分かち合いたかった。
「いやでも……はしゃぎすぎだろ」
自転車を
目標を達成して、応援してくれた誰かと喜んで、そんなの真っ当な受験生みたいじゃないか。そんな、人に自慢できるものじゃないのに。
でも今日だけはいいかと、開き直る。
「あ──────!
「ん……おおおっと!?」
目深に
塾に行く途中で、落ち合うことができた。
正太が自転車を止めると、南雲が勢いよく走ってきて自転車カゴにぶつかった。おい。
「ど、ど、どうだった!? いい報告って言ってたから……でも期待しちゃダメだよね! まったく一ミクロンも期待してないよ! ああ、深呼吸、深呼吸……」
「まったく落ち着けって! 本当に全然、別にどうってことないし、スマホで伝えちゃっても、もちろんよかったんだけど! まあでも南雲には直接の方がいいかなって思ってさ! ほら、色々巻き込んじゃったところもあるしね!」
「落ち着いて、真嶋。興奮しすぎ。逆にこっちは冷静になれたよ」
どうどう、と南雲が手でジェスチャーする。
そ、そんなに興奮していたか……?
「じゃあ、早速結果を。で、先に言うと、あの
「……普通によくてムカつくな」
「僕は、三位だったから」
「三……三位!? つまり、それは……」
「勝ったって、ことだ」
「勝った……ていうかもはや完全勝利……」
南雲は
「やったじゃん……真嶋! よっしゃあああああああああ!」
拳を突き上げる南雲に釣られて、正太も万歳した。
この快感は、ちょっとヤバいかも。
誰かと喜べることが、こんなにもぞくぞくすることだなんて──。
「──
ふいに声がして、振り向く。
道端で騒ぎすぎたか。また、同級生に見つかってしまった。
「
鼻先と
にもかかわらず、南雲の顔が真っ青だとわかった。
がたがたと、立っていられないくらいに足が震えている。
前に
体を支えようと
「え──」
南雲は背を向けて走り出す。
わけもわからず、正太はその背中を見送ることしかできなかった。
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