第6話 現在、警察はどちらが有力だと思っているのか?

「事件と事故の両面で、捜索しています」

美咲ちゃん失踪に関して、山梨県警は今でもこういう発表をするにとどまっている。


 これを見て、どうして事件か事故かの見通しが出ないのか、不思議に思っている人も多いと思う。


 中には、

「警察は怠慢だっ! いや、それどころか、初動に失敗したから事実関係を隠蔽しているのだろう」

とか、

「もう事故として見通しが出ちゃってるんでしょ、本当は。だけど、死因を特定するような物証が出ないので、建前上、事件と事故の両面で捜索すると言っているだけなんじゃない?」

なんて声も、様々なコメントで見掛ける。



 警察が怠慢かどうかは、私には分からない。

 ミスがあったのかなかったのかも……。


 ただ、報道の感じでは、初動の段階で大きくミスがあったようには感じなかった。


 事故と事件、どちらに偏ることなく捜索と捜査をしていたし、それこそ異例とも言えるほどの人員を配置して真相解明に努めていたように見えたから。


 現状では、40人体制で捜査しているらしい。

 日々、山の中を捜し、少しずつではあるが遺留品や遺骨の類も見つかっている。


 この40人体制というのが、多いか少ないかは、人によって感じ方が違うと思う。

 しかし、山梨県警の規模としては、この40人体制というのは、相当に人力を割いている状態のようだ。


 と言うのも、山梨県警全体の警察官の人数が、1600人ほどしかいないからだ。

 警視庁などは4万人以上も警察官がいるし、神奈川県警も万単位の警察官がいることを考えれば、山梨県警の1600人はあまりにも少ない。

 その中から一つの件のために二桁人員を割くのは、たしかに大変だろう。


 この40人の中には、警視庁からの応援も入っているようだ。

 最近、靴跡の件を問い合わせたのも警視庁の方かららしい。



 事故として見通しが出ているかどうかについては、否定できると思う。


 否定できる理由は、警察は何をおいても証拠がすべてだからだ。

 現状で遺骨や遺留品は特別に事故であることを示していないし、死因を特定するに至るような遺骨や遺留物も出ていない以上、内部で勝手に見通しが出ていると推し量るのは早計であろう。


 それに、もし、遺留品や遺骨から事故との見通しが出ているのであれば、少なくとも警視庁の応援を頼んだりはしないはずだ。

 一口に警察と言っても、警視庁や各県警は別組織に等しく、基本的に横のつながりがあるわけではないので、事故の見通しが立っているのなら別組織から人員に来てもらう必要はないからだ。


 事故だと断定されれば、山梨県警は非常に強い批判にさらされるだろう。

 なんせ、美咲ちゃんが山の中にいたのに、見つけられなかったのだから。

 事故ならば捜索次第で助かった可能性まであるし……。


 そんな汚点とも言えるような件のために、別組織から応援を要請するなんてことは、まあ、警察組織としての在り方からして有り得ないと言って良いと思う。

 汚点を別組織からの人員に見られれば、恥部を晒しているようなものだからだ。



 と、すると……。

 警察は少なくとも事件の側面を捨ててはいないと思う。


 というか、事件の可能性を重く見ているからこそ、山梨県警としては異例とも言えるほどの人員を割いているのだと思う。



 個人的には、警察が情報をあまり出してこないのも、事件の可能性を重く見ているからではないかと考えている。

 情報をあまりにも出し過ぎると、犯人が安心してしまうことを恐れているのかと……。


 まあ、情報云々についてはあくまでも私の私見に過ぎないので、どこまであてにできるかは疑問だが……。

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