第2話 美咲ちゃんのお母さん犯人説は、有り得ない

 表題にあげたお母さん犯人説は、美咲ちゃん失踪当時からかなり言われていた。

 当時のヤフコメなどでは、事件説を主張する約半数はお母さん犯人説だったように記憶している。


 しかし、個人的にはこのお母さん犯人説について、とても違和感があった。


 違和感の内訳は、

「娘を殺害するつもりなら、わざわざ知人が多く参加しているキャンプ時にするだろうか?」

「美咲ちゃん失踪から捜索までの時間が短いのはどうなのか?」

という二点の疑問があったからだ。


 過去に起こった親が子供を殺害するケースは、ほぼ自宅内で行われている。

 これはある意味必然で、自宅内は完全なプライベート空間であるから、殺害したのか病気や怪我、不慮の事故で亡くなったかが分かりにくいからだ。

 実際に、裁判になるとこの点が争点になることからも、自宅内での殺害は加害側の親にメリットが大きいと言える。


 と、こう書くと、

「乳幼児ならともかく、小学生を自宅で殺害して隠し通すのは難しいのでは?」

「キャンプにも事件か事故か分からないメリットがあるので、一概には言えないのでは?」

という反論がある人もいるだろうと思う。


 そこでクローズアップされるのが、美咲ちゃん失踪から捜索までの時間が短いという点だ。

 もし、美咲ちゃんのお母さんが犯人なら、失踪から20分で捜索を開始するだろうか?

 失踪が発覚した時点でお母さんの単独行動はまず無理だ。

 しかも、キャンプには知人と多数で参加しているため、そもそも、殺害に費やす時間が極端に少ない。


 私が母親で子供を殺害しようとするのなら、少なくとも家族しか知人がいない旅行やキャンプ時にするだろうし、失踪から捜索を開始するまでの時間を長くとれるように調整するだろう。


 失踪後20分で捜索を開始したというのは、相当迅速な判断だと客観的に思うし、その後一時間で警察に通報しているのも初動としては満点に近いと思う。


 殺害目的の親が、捜索に加わりながら殺害を遂げるのは、まず不可能に近いとしか言いようがないのだ。



「いや、共犯者がいれば可能でしょ」

こういう反論もあるとは思う。


 しかし、共犯者がいるのなら、尚更、捜索までの時間を長くとるのではないだろうか?

 お母さん自身は直接殺害現場にはいないので、万が一にも殺害が発覚しないように時間調整をするはずである。


 それに、美咲ちゃんが一人になったのは、偶発的な要素によるものなので、それをお母さんが調整するのは不可能だ。

 なんでも、キャンプに参加した子供達で、お菓子を獲得するジャンケンをして、勝った順にお菓子を選べるゲームをしたのだそうだ。

 美咲ちゃんが負けてお菓子を食べるのが遅くなり、その分、他の子より遅れて遊びに出かけた。

 そのタイムラグは5分ほどであったという。


 その5分をお母さんが作り出せる状況だというのならまだしも、これは完全に偶然だ。

 だとすれば、共犯者にやらせたという線もまずは荒唐無稽な想像にしか過ぎないと思う。



 美咲ちゃんのお母さんに関しては、脅迫や名誉棄損で逮捕者が出ている通り、完全に白だ。

 警察は美咲ちゃんのお母さんのアリバイを証明している。

 民事訴訟で、お母さんに対する誹謗中傷についても訴えられている。


 それでも、今なおYouTubeなどでは、お母さん犯人説をまことしやかに主張する者がいる。

 これを読んでいる賢明な諸氏はこんなことを絶対に言わないと思うが、まずは絶対にあり得ない説から潰していこうと思うので、これから書かせてもらった。

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