憂いを抱いた少女が求めるモノ

闇野ゆかい

第1話プロローグ 『本の世界』

「ねえねえ、ママはそこに行ったことある?」

寝かしつけようと私の胸をトントンと揺らす母親の顔を見つめながら訊ねた。

「ううん、行ったことないの。ママ達は近付けないの、には。エルティアだって、行っちゃダメよ。は、危ないんだから」

「う、うん……キレイ、なんでしょ?」

「……綺麗よ。でも、エルティアが行ったら大変なことが起きるわ。行こうとしたらダメよ、エルティア。エルティアは賢いから分かるわよね」

「うん、分かった……お、おやすみなさい、ママ」

「お休みなさい、エルティア」

母親は、安堵した表情を浮かべ微笑み、両親の寝室に歩いていった。


天井を見つめながら、母親が読み聞かせしてくれた書物に出てきた大樹のことを想像した。


書物に出てきた大樹は、神聖な生命のヒトツとして挙げられるモノだと、教えられたけど幼い私には理解出来ずにいる。


私の暮らしている村からでも、その大樹を見られる。





大樹の逸話いいつたえが描かれた本は、



——この世界はアナタが思っている以上に美しさを保ってはいない。


と、この文言で最後を締め括られている。





私は、大樹にまつわる秘密を探るためにこの村を出て、この世界をまわる。



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憂いを抱いた少女が求めるモノ 闇野ゆかい @kouyann

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