第4話 何故か女装させられそうになる。そしてまた追いかけられる
「「なんでホワイトがいるの!?」」
「なんであなた達がいるの!?」
痴漢に会ったと2人に連絡を入れるとすごく近所にいたのか送信ボタンを押した瞬間に俺たちの目の前に現れた。そして会った瞬間の第一声がこれである。
「……知り合いだったんだな。君たち」
思った以上に世間って狭いんだな。
「雫さんを痴漢から守ってくれたんですね。ありがとうございます」
「偶然その電車に乗ってたから。ていうか驚いたわ。まさか知り合いだったなんて。お兄さんも抜け目ないね」
「下心のしの文字もないよ」
「まぁお兄さんならそう思ったよ」
しっかしまぁ。あの時の小学生の子がこんなに大きくなって。……ていうかこの中で1番身長低いって俺ほんとにあの時から成長してないんだな。
「んー…………」
「ところでなんだけど……2人ってどうやって知り合ったの? お兄さんと」
「1か月前くらいに雫さんが怪奇に追いかけられてたのでそれを助けてからですかね」
「……フラペチーノうっま」
「雫さん、ほんとに28歳ですか?」
一応これでもアラサーです。アラサーおじさんです
「ていうかホワイトって呼んでるけど、魔法少女なのか?」
「はい!」
まるでこれじゃちょっと大きい子犬だな。
「通りでテレビで見たことあるって思った。最年少国家魔法少女」
国家魔法少女とはその名前の通り国に属する魔法少女のことであり、民間の魔法少女よりもより危険な任務を任されられることがあるが、国の支援を直に受けれたり知名度が上がったりと何かとメリットが大きく、多くの魔法少女はこの国家魔法少女を目指す。
「凛と柚子もそれ目指してるのか?」
「当分の目標は今のところそんな感じです」
「成れるといいけどねぇ……」
2人の表情を見る感じ、やっぱり成るのは難しいみたいだな
「2人の実力なら十分なれると思うけど」
「国家魔法少女はより難しく死亡率が高い任務を任せられるんですよ。……今のままじゃダメなんです」
何かあったのかとは聞かなかった。というより聞けなかった。でも2人の空気が一瞬で変わった瞬間、直感的にこの2人には前に国家魔法少女にならなくてはならない理由があると悟った。
「背負わせすぎなんだよ。この世界は」
「とりあえず、この話は辞めない? 多分、気持ちも落ち込むし」
「そ、そうだね。うん。ごめん」
魔法少女。聞こえは良いが現実はあまりにも非情で残酷。俺はその片鱗をここで感じたような気がした
◆
「で。なんで結衣は雫さんにナンパしたの?」
「ちょっ柚子」
柚子が俺の体を自分によせ、自分たちのものだぞと主張するような、威嚇する猫のような雰囲気で結衣に問いかける。
「ナンパなんてしてないよ。ただお茶誘っただけだよ」
「それを世間一般でナンパっていうんだが!?」
「良いじゃん! 私だって久しぶりにお兄さんとあえて嬉しかったんだから!」
「あ、ナンパって認めた。私たちだって元々雫さんとお出かけする予定だったんだけど」
「えっ。ずる! 何それずる!」
「ズルくないです。結衣が先に合わなかったのが悪いんだよー」
「えっと。結衣も誘えば「「雫さん(お兄さん)は少し黙っててください」」はいすみません」
あれ。この2人ってこんなに仲悪いの? ていうか柚子ってこんな感じの子だっけ。
「凛さーん。このふたりって仲悪いの?」
「いえ。全然。多分、雫さんが取られるのが嫌なんだと思いますよ。すごく懐いてますし」
「えっ。そんな理由? そんなしょーもない理由?」
「前言ってました。『雫さんみたいなお姉ちゃんが欲しかった』って。同じ歳だったらとっくに告ってたと」
「……レズビアン?」
「いえ。ヘテロセクシュアリティです」
最近の女子高校生はよく分からない……。
「一応男として見られてる……って解釈でいいのか?」
「大丈夫かと。とりあえず行きましょうか。このままじゃ埒が明かなそうなんで」
「え。良いの? あの2人放っておいて」
「大丈夫ですよ。まぁその間、私が雫さんを独占できますし」
凛って1番しっかりしてるから、やっぱりどこか抜け目ないというか。……いやまて独占って聞こえたぞさっき
「さっき独占って言ったか?」
「はい。私、こう見えても欲深いので」
「「あっ!! 凛!!」」
「ぐえっ」
こっちに気づいたふたりが俺たちの方に向かって走り出し、俺の背中と頭に伸し掛る。
「……助けてくれ。数ヶ月前の俺」
頼むからこっちの身にもなってくれ。俺の体力と理性がそろそろもたなそうだ。
◆
「「おぉぉー!!」」
「ど、どう?」
「めちゃくちゃ似合ってるじゃん」
「え。これ、いつものあのクソダサ私服の凜なの??」
「まぁ。元がいいからな。下はプリーツロングスカートで正解だったようだな」
「ぷ、プリン?」
「プリーツロングスカート」
膨れジャガードベスト+インナーロングTシャツ+プリーツロングスカート。元が茶髪ロングで華奢な見た目の美少女なんだから、この組み合わせが似合わないわけがないんだよな。
「お兄さん、男性なのに詳しいんだね」
「私、普通に女子力負けてるような気がする」
「あー。いやデニムスカートでも良いんだが。中にハイネックメロウシアートップスとシャツワンピでも似合う気がするんだよなぁ……」
「詳しいってレベル超えてない??」
「妹いるからな」
「普通の兄はそんなに詳しくないと思います……」
「俺と違って元がいいんだからちゃんとファッションにはこだわっておく方がいいぞ。勿体ない」
ダサTシャツでも普通に似合ってるんだから、お洒落したらそれが似合わないわけがないんだよな……。
「お兄さんお兄さん。雫お兄さん」
「はいなんでしょう……はっ? えっ。ちょっ」
おっとこれは。とてもじゃないが嫌な予感がする
「そんな無言でジリジリ寄ってもらわないで貰えますか? 怖いです」
「そんなことないですよー?」
「そうだよそうだよ。まぁまぁ雫さん肩の力を抜いて抜いてね?」
「……ごめんなさい。雫さん。こればかりは私も止められないです」
「凛さん?? 君だけが頼りなんだが?? ……おいまて。何をさせるつもりだ。俺は着替えんぞ。大体おっさんがこの服きて誰得なんだよ」
「「「私得です」」」
「ここには変態しかおらんのか!?」
俺は28歳だぞ。もうアラサーだぞ。正気か。正気なのか!?
「大体男だぞ?」
「でも雫さん、高校生の時女子に更衣室連れてかれそうになったんですよね? 行けます行けます」
「おい待て。その理論はおかしい。何一つ間違ったことは言ってないがおかしい。俺だって好きでこの見た目じゃないんだぞ。遺伝的な問題でだな」
「この世界には男の娘っていう言葉がありましてね……女装してなくても女の子に見える人種だっているんです。何にも不思議じゃないです」
「それ男の【娘】って書いて男の娘だよな? ちょっ。待て待て待て!! ……くそっ。力強っ」
そうだ。この子達、魔法少女じゃねぇか。先天的にも後天的にも魔法は使えるんじゃねぇか。一般人が魔法少女に勝てるわけないだろ!?
「大体、男の娘なんて2次元での話だ。3次元空間のこの世界には居るわけないだろ!?」
「お兄さんがその実例です。私見てみたいんですよ。お兄さんの女装」
「女装って言っちゃってるじゃねぇか!?」
「あーもう!! 男のならうじうじしてないでシャキッと決めちゃってください!! 大丈夫ですよ。失うものは何もないですよ」
「あるわ!! 色々俺の中で無くな……おい」
続けざまに否定の言葉を出そうとした瞬間の事だったドカンっと大きな爆発音とともに外から煙が出てるのが見えた。
「……怪奇出たじゃねぇか」
「凛、柚子。いくよ。緊急要請よこれは」
「「了解!!」」
結衣が一目散に店を飛びだし、柚子と凛が懐からステッキを取りだし後を付けるように颯爽と出ていく
「切り替えはえぇなぁ……。ん? まてよ」
今までの展開を考えると1番初めに狙われるのって……。
「……おはようございます」
怪奇がじっと俺の方を見つめていた。その瞬間、怪奇が俺の方に向かって走り始めた。
「……やっぱりこうなるんだな」
ホント勘弁してくれ。何で一週間に一回、俺は怪奇に追いかけられないといけないんだ。
「3人とも!! なるべく早めに頼んだぞ!!」
「分かった」
「了解です」
「お兄さん大丈夫なの?」
「おう」
いやしかし、一週間に一回追いかけられると、いやでも体が慣れてくるもんなんだな。適当に違うことを考えられるくらいには心に余裕ができるもんなんだな。
「……こう見たらホワイトって見た目クールなんだな」
魔法少女の武器とは思えない大きい鎌に着物のようなコスチューム。魔法少女要素がまるでどこかに行ってしまったような見た目だがこれでも彼女【神木結衣】は国家魔法少女である。……ほんとに魔法少女感どこいったんだ
「あの二人は魔法少女なんだけど……おっとあぶね」
ホワイトと呼ばれる割には髪の色は黒色なんだな。
「そういや凛、その髪の色が変わるのは魔法?」
「今それ聞きます!?」
「おっとすまん」
「雫さん、思った以上に余裕なんですね。はいそうです。魔法ですよっと!」
「おぉ。良い爆発」
そう考えたら柚子のピンク髪はやっぱ地毛なんだ。髪の色変わってないし。髪の色が変わるのはやっぱりそれなりの理由があるのかな。……後で聞いてみるか
「よしっ。そろそろ決めるよ!! ……はぁぁぁっ!!」
俺が走るのを辞め、怪奇がその場で停止した瞬間、結衣が大鎌を頭上に大きく掲げ、思いっきり切りつける。
「■■■■■■■ッッッ!!!」
怪奇が断末魔を叫びながら黒い塵になりながら空へと消えていく。相変わらず何言ってるのかわかんねぇ……。
「ふぅ。任務完了。2人ともお疲れ様」
「美味しいとこ持ってかれた」
「まぁ負傷者は0人なんで良かったじゃない」
完全に消えていくのを確認して3人は武装を解除した。周りを確認すると大人数の人が3人に向けて盛大な拍手を送っていた。
「……魔法少女ってやっぱ凄いんだな」
「あっ。お兄さん、服」
「え? ……うわまじか。破れてるじゃねぇか」
やめろ。その目で俺を見るな。その期待の眼差しで俺を見るな。
「~~~ッッ分かったよ。着りゃいいんだろ着りゃ」
「「「よっしゃ!!」」」
はぁっと俺はひとつ大きなため息を零し、渋々この3人に着せられ結局この着せられた服のまま帰ることになった。
途中、恥ずかしくて泣きそうになったのはもはや言うまでもないだろう。
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