第161話 私の王子様

 そしてそれはリーリャも例外ではなく、やはり吹き飛ばされてしまいそうになっている姿が目に入ってくる。


 フランが本気であればこの程度では収まらない上に、まだ吹き飛ばされないように踏ん張れる程度に抑えているところから見てもかなりフランは手加減をしているであろう事が窺えてくる。


 そして、この模擬戦の前にフランが『徐々に威力を上げていく』ような事を言っていたように、まだリーリャが踏ん張っている限りフランは今行使している風魔術の威力を上げていくであろう。


 そうなる前にリーリャには踏ん張る事をやめて素直に弾き飛ばされた方が結果的に安全なのであろうが、リーリャはリーリャでフランや俺の前で啖呵を切った手前そう簡単に負ける事はできないのであろう。


 そしてこの流れであれば間違いなくフランはもう一段階魔術を上げてくるだろう。


 そうなった時、おそらくリーリャは無事では済まない可能性がある。


 足や腕が骨折するくらいならばいいのだが、頭を打ち付けて最悪死亡してしまうなどなってしまう可能性だってあるのだ。


 そうならないようにここはフランの婚約者としてフランが人殺しにならないようにサポートをするべきだろう。


「きゃぁっ!?」


 そう思いながら俺は一気にリーリャのところまで駆け出していくと、そのまま追い抜いてリーリャの後ろに周った所でフランは風魔術の威力を上げたようでリーリャが吹き飛ばされて俺の所まで吹き飛んでくるではないか。


 そして俺は吹き飛んでくるリーリャを抱き抱えるようにしてキャッチすると、そのまま土魔術で穴を開けてその穴の中でフランの風魔術をやり過ごす。


「勝者フランっ!!」


 その光景を見たオリヴィアさんは流石にフランの勝ちであると判断したのであろう、フランの勝利を宣言するのだがもう少し早く言って欲しかったと思いながら俺は抱きかかえたリーリャを覗き込む。


「おい、大丈夫か? 怪我とかしてないか? 大丈夫ならば返事をしてくれ」

「…………いたんだ……」

「はい? 何が居たっていうんだっ?」

「ピンチの時に助けてくれる私の王子様は実在にいたんだ……存在したんだ。 御伽噺だとばかり思っていた」

「はぁっ!? 一体何を言っているんだ? というかいいい加減身体は大丈夫か教えてくれないか?」


 そして、俺はもし何かしら怪我をしていた時の場合すぐに治療ができるようにリーリャに問いかけるのだが、ぶつくさと意味が分からない事をいうではないか。 今この時に王子様がどうとか御伽噺がどうとか言われても意味がわからないんだが?

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