第147話 死んでないから上出来

「あ、ありがとうございますわっ」

「う、うむっ! ではフランとの模擬戦はこれで終わりであるっ!! 後ろの方で他の皆が終わるのを待っているようにっ!!」

「ですが、まだまだもっと威力の高い技とかもあるのですが……?」


 そしてアーロン先生は震える足でなんとか立っている状態から、どうにかフランへ模擬戦は終わりである事を告げる。


 しかしながらフランはそれに反してまだ物足りないのと、たった一回攻撃しただけではちゃんと評価してくれるのだろうか? もっとできるのに、といった表情でアーロン先生へ『まだ威力の高い技があるのだが見なくて大丈夫か?』と、聞きようによっては挑発とも取れる言葉を投げかけるではないか。


「ぐぬっ…………ま、まぁ……今日のところはこれくらいで勘弁しといてやろう。 別に武術の授業が今日の一回だけという事ではないからのっ。 これからフランの実力を見せていけばよいっ!!」


 そしてアーロン先生はやはりというかなんというか、フランの言葉を挑発と受け取ったのか瞬間湯沸かし器の如く顔を真っ赤にして『そこまで言うのならば儂の力を見せつけてやるわいっ!!』と言いたげな表情をするのだが、寸前のところでその言葉を飲み込み、最初に告げたようにフランとの模擬戦は終わりである事を告げる。


 しかしながら最後の『まだ武術の授業はあるからこれから見せてくれればいい』と言ったのはおそらくアーロン先生の妥協に妥協を重ねた上で、それでも折れる事ができなかったプライドから『フランの技をこれ以上受けきれないし、勝てるビジョンが見えない』というのを生徒たちに少しでも誤魔化そうとしてしまった結果『本当はまだまだフランとは模擬戦を続ける事ができるけど、授業はまだあるから次にするように』と誤魔化してしまったのだろうが、俺はこれがどう考えても死亡フラグにしか聞こえなかったのは気のせいだろうか?


 ちっぽけなプライドを守ったせいでこれから失うもののお大きさを考えると、俺は思わず心の中でアーロン先生へ手を合わせてしまう。 アーロン先生には強く生きてほしいものである。


「ローレンス様、わたくしは上手く手加減できていたと思います?」

「うん、まぁ……そうだね。 死んでないから上出来だと思うよ……? 多分」

「そ、そうですわよねっ!! ありがとうございますわっ!! あの位ですわねっ!!」


 そんなこんなで『まだ動き足りない』といった表情をしながらフランがこちらへ戻ってくると、俺へ『手加減はあの位で大丈夫か?』と聞いてくるので『死んでないから良いんじゃないのか?』と返しておく。

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