第142話 スフィアに気がある

「えっと、弁明とかではないのだが……このままスフィアが俺と組んだら折角スフィアと組みたそうにモジモジとしているダミアンが可哀想……とか?」

「お話になりませんね。 却下です」


 そして俺たちの会話を少し遠くで『別に、俺はただ近に本当たまたま偶然いるだけでお前達の会話なんかにはまったく興味なんかねぇぜ』というような態度で盗み聞きしていたダミアンは、スフィアの言った『却下です』という言葉を聞いた瞬間に誰が見ても明らかに落胆したのが見えるではないか。


 何だろうか、マジで少しダミアンが可哀想になってきたわ。


 というかスフィア、ダミアンが盗み聞きしていたのを知っていながらあえてバッサリと言っただろ?


 しかしながら、それほどまでにダミアンとは組みたくないというスフィアの気持ちが伝わってくるため、ここで俺がダミアンのためを思って半ば強引にダミアンとスフィアを組ませた場合、余計に二人の仲(特にスフィアのダミアンに対する評価)が悪くなりかねない。


 なのでここは俺が折れてスフィアと組むというのが一周回ってダミアンのためのような気がしてきた。


 というか、ダミアン。 お前絶対にスフィアに気があるだろう。 反応からしてもわかりやすすぎる。


 うん、青春だな。 


「分かった。 では俺はスフィアと組むとしよう」


 そして結局俺はスフィアを論破することもできなければ半ば強引にスフィアとダミアンを組ませる事もできずにそのままスフィアと組むことを了承する。


 そんなこんなで当初俺が不安に思っていた『組む相手が見つからずに一人残される地獄』を味わう事から何とか避ける事ができ、周囲も次々に二人一組のグループが出来上がっていく。 


 ダミアン以外。


 結局、ダミアン以外のクラスメイトたちは組む事ができたらしく、グラウンドで一人ダミアンだけが取り残されているではないか。


 あぁ、ダミアンの心境を想像しただけでキツイものを感じてしまう。


 というかガルシア先生がフランと組むとか言わなければこんな悲劇は産まれなかったはずである。


 それは他のクラスメイトたちも同じような事を思っているのかガルシア先生をみんなが『一人余ったんですけど、どうしますか?』というような表情見つめているではないか。


「あの、もしよければ俺の従者と組ませてあげても良いでしょうか?」


 流石にこの地獄のような空間を一秒でも終わらせてあげるべく、俺の従者をダミアンにと組ませてもいいかとガルシア先生に聞いてみる。


「ふむ、そうか。 ならばそうしてもらえるとありがたいっ!!」

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