第141話 魔杖を使ってなかったじゃない
「あら、おかしな事を言うんですね」
「なんでだ? お前は今のところクラスで二番目の成績を魔術の授業で結果を残しておりダミアンは三番目に良い結果を残しているのだから普通に考えればお前にあうパートナーはダミアンか、武術に長けている他の誰かと組むのが自然な流れなんじゃないのか? そこで俺を選ぶ理由が分からないと言ってるんだけど? あと、ダミアンがお前と事を組みたそうに見てるぞ?」
そして俺は、俺と組む理由が分からないのと、ダミアンが組みたそうにスフィアを見ている事を教えてやる。
というか、ダミアンを見てるとあまりにも惨めかつ可哀想に思えてきてどうにかスフィアをダミアンと組ませてあげたくなってしまう。
何だろう、捨てられて雨に打たれている子犬を拾って飼いたくなるような、そんな感覚に近いかもしれない。
「え? 普通に考えてこないだの魔術を見ればあなたの方が上だという事がわかるでしょう? 他のクラスメイト達やガーランド先生はフランさんの魔術の威力であなたの魔術には関心が無くなってしまっていたので気づけなかったのでしょうし、あなたもわざとまだ周囲がフランさんの魔術で騒然としている中で魔術を行使したのでしょう? しっかりと行使する時から見ていれば、あなたが行使した魔術はダミアンよりも優れていることは一目瞭然だと思うんだけど?」
「いや、どうしてそこまで断言できるんだよ? 俺が行使した魔術は確かに、ダミアンよりも若干精度は悪く威力も少しだけ劣っていたと思うんだけど?」
そうだ。 あの時俺は確かにダミアンぐらいの威力で魔術を行使したはずであるし、そのあとでダミアンに絡まれても困るため敢えてダミアンより若干威力や精度は落として行使したはずであるし、あの時魔術を行使しのは俺で、ちゃんと覚えているので間違っているはずがない。
そのためスフィアが言っていることはおそらくブラフであり、このままシラを切り通せば流せる案件であると言えるだろう──
「だって、そもそもあなたは魔杖を使ってなかったじゃない。 普段であればその違和感にみんなは気付いたでしょうし、そしてあなたもちゃんと魔杖を使ったのでしょう。 しかしながら、何故だか分からないのですが目立ちたくないというあなたはフランさんの魔術で周囲がまだ騒然としている隙にさりげなく魔術を行使したつもりでしょうが、焦って魔杖を使い忘れ、しかも無詠唱で魔術を行使してしまうという初歩的なミスをしてしまった。 方や魔杖あり、方や魔杖なし。 そして同等レベルの魔術を行使した場合後者の方が魔術に長けていると思うのですが、何か弁明があればどうぞ」
──そう思っていた俺の考察はものの数秒で間違っている事がスフィア本人に証明されてしまう。
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