第140話 腹から声を出すんじゃないよ

 そして計算の授業の次は武術の授業であるため俺とフランは魔術のグラウンドまで移動する。 場所は昨日やった魔術の授業で使った修練場の隣なのだが修練場とは違い的も何もない、陸上用のトラックこそ無いものの前世でもよく見たただのグランドである。


 グラウンドには老練の騎士といった出立の、七十代程の男性が立っていた。


 その男性は歳のわりに筋骨隆々であり、身長は二メートルを超えているまさに大男と言った見た目である。


「全員集まったようだなっ。 早速授業を始めようかっ! まず儂の名前だが、アーロン・ガルシアだ。 これでも二年前までは現役の帝国軍に所属しており軍集団率いる元帥であったっ! これから宜しく頼むっ!」


 そして俺たち生徒が全員揃った事を確認した初老の男性は力強く自己紹介をするではないか。 声の張り方からも軍人をイメージできるような声の張り方で、正直いってうるさいので普通に喋って欲しいと思ってしまう。


「では、これより二人人組で魔術を使わない模擬戦をしてもらうっ!! ただし身体強化系はありだぞっ!! では組めたものから模擬戦をしてもらうから儂の前に並ぶようにっ! あとフランは儂と模擬戦をやってもらうっ!! ガーランドからお主の桁違いな魔術は聞いておるぞっ!! あまりのレベルの高さにあのガーランドが頭を抱えておったぞっ! それ程の魔術を扱えるものならば武術もそれなりにできるだろうっ!? 実に楽しみであるなっ!!」


 アーロンはそういうと厚い胸を張って『ガハハハハッ!』と大声で笑う。


 こいつの音量を下げる事ができるリモコンがあれば今すぐにでも十段階は下げたいと思ってしまうくらいにはうるさい。


 日常会話を腹から声を出すんじゃないよ。


「しかし困った……二人組といってもフランと組めないんじゃ誰と組めば良いのか……」


 さてどうしたものかと思っていると、一人の女性が俺の元へと歩いてくるではないか。 正直誰でも良いので余った奴が出るまで待機しとくか。


「もしまだ組む相手が見つかっていないのであれば私と組みませんか?」

「…………あぁ、構わないけど。 だけど俺ではなくてダミアンの方が良いんじゃないのか?」


 そう俺に話しかけてくるのは魔術の授業の実力測定テストで二位だったスフィアではないか。


 はっきり言ってスフィアとは目立ちたくないので断りたいのだが、断った場合はそれはそれで今後面倒臭そうな事になりそうな気もするので俺はスフィアと組むことにする。


 てか何でダミアンを選ばないのか謎なんだが。


 それに、明らかにスフィアを誘うとして棒立ちになっているダミアンが可哀想ではないか。

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