第133話 空気も美味しい

「おはようございます、オリヴィア様」

「はい、おはようございます。 しかしながらリーリャと私の仲ですからそんな堅苦しい呼び方ではなくて昔のようにフランクに呼んで欲しいのだけれども?」

「オリヴィア様……それでは他の生徒に示しがつきません。 オリヴィア様はこの学園中等部を仕切る生徒会長なのですから。 それにオリヴィア様は本家であり私は分家ですので」


 そんな事を考えていると私の乗っている馬車は学園に着いたようで、私の生徒会の仕事を補佐してくれる、私の幼馴染でもあり親友でもあるリーリャ・ローレンが出迎えてくれる。


 そしていつものように堅苦しいリーリャに子供時代のように接してほしい旨をいくら伝えてもリーリャは『オリヴィア様は伯爵家であるロレーヌ家であり私はその分家であるローレン家ですので』と中等部に入ってからというものこれである。


 ここ最近では私が生徒会長になった事も相待ってさらに堅苦しくなってきた。


 リーリャ曰く『他の生徒に示しがつかないから』という事らしいのだが、私はそんな事などよりもリーリャと昔のように仲良くおしゃべりなどをしたいと思っているし、そう伝えても聞く耳すら持ってくれないのでここ最近はリーリャの好きにさせている。


 無理に従わせたい訳ではないし、リーリャがそうしたいというのであればそれを尊重するべきだろう。


 しかしながらやはり少しだけ寂しい事には変わりない。


「まったく、いつからリーリャはそんなに意固地になったのかしらね? まぁ、リーリャがそれで良いというのであればそれで良いのだけれども。 それではいきましょうか」

「ありがとうございます(あぁ、今日も美しいオリヴィア様っ!! 美し過ぎてオリヴィア様の周りが輝いておりますっ!! その姿はまるで天使に祝福されたようっ! いえ、実際に祝福されているに違いありませんっ!!

 だってこんなにも神々しいのですものっ!! スーハースーハーッ、オリヴィア様のいる空気も美味しいですっ!!)」

「…………? 何か言ったかしら?」

「いえ、何もありません」

「そう? なら良いのだけれども」


 何だかリーリャが何か呟いていたような気がするのだが気のせいとのことなので私はそのまま学園の門をくぐる。


「それでリーリャ、貴女は私たちの一つ下である今年の新入生の話は聞いたかしら?」

「はい。 私のクラスでも放課後はその話題でもちきりしたから。 しかしながら流石に話を盛り過ぎており信憑性に欠けると言わざるを得ません」

「あら、貴女のクラスでも既に話題になっていたのね。 なら話は早いわ。 今日私はその話題の人物であるフランさんに会いに行こうと思っているわ」

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