第132話 豪華客船
◆
翌日。
俺は憂鬱な気分で馬車に乗るのだが、それとは対照的にフランのテンションは高くご機嫌である事が窺える。
社会人を経験してきたが故のやらかした次の日のテンションと、若さゆえの切り替えの早さなのだろう。
こういう何気ない部分でおじさんっぽさを感じてしまい偶に悲しくなってくるのだが、考え出したらキリが無いため考えないようにする。
「今日は体術の授業があるので今から楽しみですわっ!」
そしてフランは昨日の出来事を反省しているのかしていないのか今日の午後の授業である体術の授業が楽しみであるとキラキラした目で言うではないか。
分かっているとは思うのだけれども一応釘は刺しておくことにする。 というかそうでないと心配で気になってしまいストレスで禿げそうだからである。
本人が分かっているのに他人から指摘される事は腹が立つだろうが俺の髪の為にも、ちゃんと手加減するつもりがあるのかだけは確認させて欲しい。
流石にこの歳で禿げるのだけは勘弁願いたい。
「フラン、分かっているとは思うけどほどほどにな?」
「えぇ、分かっておりますわっ!! 昨日の今日ですもの。 ローレンス様の『ほどほど』という理由もちゃんと理解できましたので今回はバッチリですわっ!!」
何故だろう。 フラン本人が自信満々に答えれば答える程不安になってくるのだが。
「そう、それならば安心だね」
「はいっ! 大船に乗ったつもりでいて下さいましっ!! このフラン、昨日のような失態はいたしませんわっ!!」
そしてフランはそう声高らかに言うと二本のドリルもフランの自信にシンクロしているのかギュルンギュルンと回転している。
「タイタニック号でなければ良いのだけれども……」
「タイタニック号って何ですの?」
フランに聞こえないように呟いたつもりがバッチリ聞かれていたらしく、フランはタイタニック号が何なのか聞いて来る。
「とても大きな豪華客船の名前だよ」
「なるほど、でしたらタイタニック号に乗ったつもりでいて下さいましっ!」
「それは頼もしいね」
沈むけどね。 とは言えず俺は言葉を濁すのであった。
◆
この歴史ある帝都魔術学園にとんでもない化け物が入学したという話を講師同士が話している所をたまたま聞いたのだが、詳しく聞いてみるとどう考えても眉唾ものとしか言いようがない内容ばかりであった。
いくら何でも【火球】の爆発の威力で修練場に観客席もろとも大穴を開けて、そしてその大穴を土魔術で即座に直すなど信じろという方が無理だろう。
しかしながら講師がそんな直ぐバレる嘘を吐くとは考えられず、ならば自分の目で確かめてみようと私は思った。
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