第131話 興奮する大型犬





「という訳で、先日見事に白狼族たちだけで裏の組織の一つである【蛇の生首】を壊滅する事ができたぞっ」

「ふむ…………ふむ? え? 何で?」

「この【蛇の生首】という組織が白狼族の村を襲った組織だった事を突き止めたからなっ! 白狼族たちも復讐ができたと大喜びであったぞっ!」

「…………なるほど。 でも一般人には迷惑をかけないように気を付けるようにな」


 今日魔術の授業でフランがやらかした事について、明日からどうやってはぐらかして行こうかと頭を悩ませていた所に部屋の扉がノックされ為通すと、どこか誇らしげなシシルが入って来て『白狼族達を使って裏組織である【蛇の生首】を壊滅してきた』と言うではないか。


 内容が内容なだけに一瞬理解できなかった程である。


 そしてシシルはというと、まるで良い事をした(と本人は思っている)ので褒めて欲しそうにしている大型犬のような表情で俺を真っすぐと見つめて来るではないか。


 でもまぁ確かに悪い事ではないし帝国的にも良い事である事は間違いのだけれども、奴隷達には危険は事は極力してほしくない為労いの言葉はかけつつも一応釘は刺しておくことにする。


 奴隷達は俺の稼ぎに直結するからな。


「シシル良くやった。 裏の組織一つを壊滅できる程までに白狼族達を育ててくれたのならば、もう白狼族達が襲われても大丈夫だろう。 それと、白狼族の村がピンチの時はダークエルフたちが白狼族達を村まで送ってやって欲しいんだが大丈夫か?」

「その時は我々ダークエルフも助太刀するぜ」


 返事が良いのは良いことなのだが、なんかシシルは毎回脳筋臭い気がするんだけど、だからこそしっかりと伝えるべきことは伝えるべきだろう。


「それは助かる。 あと、これはダークエルフだけではなくて白狼族や他の奴隷達にも伝えて欲しいのだけれど、自分の命を最優先にしてくれ。 少しでも危ないと思ったら撤退するように。 そもそも勝てない敵には歯向かわないようにな」

「承知したっ!! あ、あと……その……」

「うん? どうした?」

「あ、頭を撫でてもらえないだろうか?」

「あぁ、それくらいならばお安い御用さ。 シシル、頑張ったね」

「あ、ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」


 そしてシシルは褒められて興奮する大型犬のような表情で影の中へと沈んでいった。


「あの、ご主人様? 私も普段から頑張っているので、その……」

「フレイムも頭を撫でてあげるからこっちにおいで」

「はいっ!」


 そしてちょうど俺の隣にいたフレイムから頭を撫でる事をおねだりされたのでフレイムの気がすむまで撫で続けるのであった。

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