第130話 一人でも壊滅できるであろう

「あぁ、その気持ちはよくわかるぞ。 私もご主人様に初めてここへ連れられてきた時はそうだったからな。 というわけで手始めにあそこにいるサラマンダーを討伐してこい」

「え? はい? ちょっ!? 流石にいきなりサラマンダーは無理だっ!! だから押すなっ!!」

「お前の股間についているものはただの飾りか? 御託はいいからさっさと行ってこいっ!!」


 そして俺が『レベルが上がった実感が湧かない』というとシシルは俺にサラマンダーを討伐してこいと、ちょうど目のまえで威嚇行動を取ろうとしているサラマンダーに向かって俺を蹴飛ばすではないか。


 こうなればもうやけだ。


 レベルが上がった事を信じて討伐するしかない。


 そう思って俺は腰に差している剣でサラマンダーに切り掛かる。


 するとサラマンダーはまるでバターを切るかのように簡単に切れるではないか。


 そして俺は自分でも信じられないほど呆気なくサラマンダーを倒してしまう。


 その代償として俺の剣はたった一振りでダメになってしまった。


 おそらくサラマンダーの硬い皮膚や今の俺のレベルに耐えられなかったのであろう。


 一応剣はできるだけ良いものを選びちゃんと手入れしてきた筈なので、その剣がたったの一振りでダメにされたのを見てレベル上げをする前の俺であれば間違いなくサラマンダーに傷ひとつすら付けることができなかっただろう。


「剣が潰れてしまったか。 だがレベルが上がったお前にはちょっと物足りなかったのだろう。 ちょうど宝石スライムを討伐した時に入手した宝石を売って自分に合ったレベルの武器を買い換えれば良いさ」


 そして俺の潰れた剣を見てシシルは今回討伐した戦利品を売って新しい武器を買い換えれば良いと言うではないか。


「そ、それは我らがご主人様が本来得るべき戦利品を我々でくすねるという事か?」

「違う。 そうではない。 ご主人様から我々が討伐して稼いだ分は一割はご主人様に渡して残った分は全額自分達で使って良いと許可は得ているから問題ないぞ」

「はい?」


 一瞬シシルの言っている意味がわからなかった。


 奴隷が稼いできたお金を、稼いできた奴隷が好きに使って良いなんて話なんか聞いたことがない。


 これでは何の為にご主人様は奴隷を受け入れているのか分からないではないか。


「じゃぁ、早速貴様の村を襲った裏の組織を潰しに行くか。 確か【蛇の生首】という組織だっかな? 流石に今のお前では一人でも壊滅できるだろう」


 そしてシシルはまるで散歩にも出かけるかのような雰囲気で今から俺たちの村を襲った組織を潰しに行こうと言うと、ここへきた時と同じように俺の首根っこを掴んで影に沈んでいく。


 その夜、裏の組織が一つ消えるのであった。

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