第129話 ダンジョンへ突き落とされる
そしてSランクである冒険者パーティーですら倒すのが難しいとされるサラマンダーやグリフォンなどをシシルはまるで野ウサギか何かを狩るかの如く腰に刺している細身の剣で簡単に切り飛ばしていくではないか。
普通に考えてあり得ない光景なのだが、実際に目の前で起きているので事実である事は間違いようがなく、それがまた俺の中の価値観をおかしくさせていく。
ともすれば俺ももしかしたらシシルのように簡単にサラマンダーやグリフォンを討伐できるかも、なんて思えてきてしまうので恐ろしい。
これで勘違いをして出しゃばった場合、一瞬にして死んでいるだろう。
しかしながらだからこそ今まで噂の一つも出なかったのであり、ある意味でこれら魔獣たちが最高のセキュリティーの役割をしているのだろう。
「ほら、ついたぞ。 ここだ」
そしてシシルと共に数十メートルほど歩くと、とある場所を指差して『ここだ』と言うではないか。
「ここって、岩しか無いのだが……?」
シシルが指差している場所なのだが、今まで見てきた岩山の風景と何も変わらず、赤みを帯びた岩がゴロゴロと転がっているだけである。
「あぁそうだ。 一見すれば何も無いように見えるのだが、実は隠れダンジョンになっているんだな、これが」
そしてシシルは悪戯が成功したような表情を浮かべ、さらに一歩踏み出すと、目の前の地面が一気に隆起し始めダンジョンの入り口が現れるではないか。
「討伐難易度が高レベルの魔獣が蔓延り、ダンジョン自体までもぱっと見では分からない。 こりゃ、今まで見つからないわけだな」
「感心しているところ悪いが、早速このダンジョンでレベルを上げてもらおうか」
「おわっ!?」
そしてある種の感動にも近い感情に浸る間も無く俺はシシルによってそのダンジョンへ突き落とされるのであった。
◆
「どうだった? この一週間は」
「そうだな……最初こそはいきなり突き落とされる形でダンジョンへ半ば無理やり入らされた時は戸惑ってはいたのだがシシルの言う通り宝石スライムしか出ず、ある意味で拍子抜けであったな。 あと初めて宝石スライムとやらを見た時こそ興奮したのだが、あんなにうじゃうじゃと現れてはすぐにその興奮も冷めてあとは単純作業の繰り返し。 本当に強くなったのかすら疑問に思えてくるほどだな」
あのスライムたちが本当に宝石スライムだと言うのであれば、間違いなく今の俺たちはとんでもなく強くなっているのであろうが、この一週間は宝石スライムしか狩っておらず、実感がまったく湧かない。
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