第128話 理由が分かった

「ほ、宝石スライム……確か宝石スライムは見つけるだけでも一生に一度で会えれば運があると言われる程の希少種なのではないのか? そんな希少種が大量に湧き出る場所があれば既に噂になっていてもおかしくないと思うのだが?」


 そして俺はシシルに聞いてみると『宝石スライムが湧き出る場所があるからそこでレベルをひたすら上げる』と言うではないか。


 この宝石スライムとは一回倒せばレベルがかなり上がると言う幻のスライムであり、出会えるだけでも幸運と呼ばれる程希少種のスライムなのである。


 それだけではなくドロップされる宝石もまた一生遊んで暮らせるだけの値段で取引される。


 それ程までに希少種であるスライムが湧き出る場所があるはずであれば噂になっていないとおかしいにも関わらず俺はそんな噂を今まで聞いたこともないのである。


 その為どうしてもシシルの言っている事を疑っているわけではないのだが、流石に信じろと言われても流石にそのままを信じることはできず、思わずそのまま聞いてしまう。


「その気持ちは凄くわかるぜ。 私も初めご主人様に教えてもらった時にそんな旨い話があるかと思っていたのだが、それが実際にあったんだけれど、確かにこれは噂にもならないなと納得したもんだ。 行けばわかるさ。 じゃぁそういう事だから早速行こうか」

「は? ちょっ!? うわっ!? 身体が影に沈んでいくっ!!」

「舌を噛むから少しだけ黙ってな」


 そして俺は返事をする間も無くシシルに首根っこを掴まれ、宝石スライムが湧くと言う場所まで連れていかれるではないか。


 しかも影に沈んだと思った次の瞬間には俺の視界は今までいた山の中ではなく草木が一つも生えていない岩山が目の前に広がっているではないか。


「こ、ここは一体……」

「ここは火竜の棲家として有名な帝国の東側にあるヒエストロ山脈の奥地だ」

「は? 今なんと?」

「うむ、分かるぞその気持ち。 私も初めは同じ気持ちだったからな。 ではもう一度言おう。 ここは帝国の東側にあるヒエストロ山脈の奥地だ。 だからこそ人族は今までこの宝石スライムが湧き出る場所を見つけ出す事ができなかったのだろうな」


 そしてシシルに今いる場所を聞いてみると『帝国の東側にあるヒエストロ山脈』と言うではないか。


 このヒエストロ山脈は火竜の棲家で有名であるのが、まずそこら辺にいる魔獣でさえ人族では勝てないようなレベルの魔獣がゴロゴロいるのである。


 そのどれかを一匹でも討伐できることができればそれこそ英雄扱いされるような魔獣がうじゃうじゃいる山脈の奥地にあるのだとすれば、確かに今まで噂にすらならなかった理由が分かった。

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