第125話 決意した

 一体これほどのダークエルフたちを隷属させ、それだけではなく奴隷から敬えられる程の主従関係を築けている人物はどんなものなのだろうか?


 そう思ったその時、俺は周囲の空気が変わったのを確かに感じた。


そして周囲を見渡せば、いつの間には数百人ものダークエルフたちが現れており、先ほどまで俺と話をしていたダークエルの女性含めて全員がある一点に向かって頭を垂れているではないか。


 普通であればこれほどの数のダークエルフがいれば流石に俺の鼻が捉えて気付くはずであるにも関わらず、まったくもって気付くことすらできなかったということに、まず初めに恐怖を感じ、そして次に数百名ものダークエルフが頭を垂れている方角へ目線を移すと、そこには何もない空間があるだけという事に気付く。


 なぜダークエルフたちは何もない場所に向かって頭を垂れているのか、そしてどこからこれ程の人数のダークエルフが現れたのか。


 それらを考えてみたところで分かるはずもなく、ただただ俺はこの光景を見つめる事しかできなかった。


 そんな時、ダークエルフたちが頭を垂れている場所に変化があった。


 それは目に見えるほどの魔力が集まり始め、そこから見える景色が歪み始めたのである。


 そして次の瞬間には、その場所に十代ほどの男性が一人立っていた。


「えーと、奴隷狩りにあって傷ついた子供たちがいるって聞いたんだけど、どこかな?」

「はっ。 こちらでございます我らが主よ」


 そうダークエルフから『我らが主』と呼ばれた男性が話すと、俺の娘たちがいる方角のダークエルフたちが横に移動して一つの道ができる。


 そして主と呼ばれた男性はその道を歩き出して娘たちの元まで行くと、娘たちの傷、それも切り落とされた足や腕までも、まるで何もなかったかのように再生させて行くではないか。


 この光景をみた瞬間、俺は緊張の糸が切れたのか、もしくは娘の腕が生えた事で安心してしまったのか、もしくはその両方か、心の底からホッとしてしまう。


 そして俺はこの時に決意した。


 周囲を見渡すと他の俺の仲間たちも同じなのか、覚悟をし終えている表情をしているのが分かる。


 そして俺たちは件の男性の元まで行くと頭を垂れる。


「我らが白狼族の子供たちを助けていただきありがとうございます。 もし貴方様が隷属しているダークエルフがいなければ子供たちの命はなく、我々は奴隷として売り飛ばされていたでしょう。 さらに、それだけではなく子供たちの欠損している箇所まで綺麗に再生していただいて、なんと礼を申せば良いのか……」

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