第124話 隷属関係

「この程度の回復薬で金銭を要求するようなケチなご主人様ではないのでそこは安心して大丈夫だ」

「……ご主人様…………?」

「それに、所詮は回復薬であり欠損部分を再生できるほどの効能は無いからな。 あくまでもご主人様が来るまでの応急処置でしかないのに、それに対して金銭を払わせるなどご主人様もきっと望んでないだろうしな」

「……そ、そうは言われてもその回復薬が高価な物であると、一年を通して山暮らしである俺たちですら分かるくらいには高価なものであろう? 流石にそんな高価なものを使ってもらって無償というのは流石に白狼族としてのプライドがなくとも俺個人がそれを良しとしない。 君たちの話はとても魅力的なのだが、流石に俺たちだけではなく子供たちまで助けてもらい回復薬まで使ってもらったにも関わらず何もお返しすることが出来ないというのは心が痛む」


 流石に白狼族どうのこうのというレベルではなく、人としてダメだろうと思った俺はそのことをそのままダークエルフへと伝える。


「それは別に構わないが、一応先ほど使った回復薬なのだが市場で出回った場合、今回使った回復薬の効能は通常の倍以上であり、当然その分回復薬の値段も跳ね上がり、安くても金貨30枚は必要になる。 それを踏まえてそれでもお金を返したいというのであれば、この後ここに来るご主人様に聞くがいい」

「あぁ、ありがとう、そうするよ。 しかしながら先ほどからずっと気になっていたのですがそのご主人様というのはどういう関係なのですか?」


 そして俺たちを助けてくれたダークエルフの口からちょくちょく『ご主人様』という言葉が聞こえてくるので、そのご主人様とはどういう関係であるのか聞いてみる。


 言葉通りの意味であればここにいるダークエルフ五名は奴隷であり、そのご主人様という意味であるのだろうが、流石にその言葉通りの意味ではない事くらい俺にも理解できている。


 そもそもただでさえ希少種でありこれほどの美女である上、賊たちをいとも簡単に暗殺できる強さを持つダークエルフを一名だけならばまだしも五名も揃えるとなると皇族でも揃えるのは難しいだろう──


「ご主人様か? ご主人様は言葉の通り我々ダークエルフのご主人様であり、私たちとは隷属関係にある間柄だな。 そして私たちの師匠でもある。 もうそろそろ仲間がご主人様をこちらにお連れするであろうから、常識の範囲内で構わないから最低限失礼の無い様にしてほしい」


──と思っていたのだが、そのまま言葉通りご主人様とはこのダークエルフたちのご主人様であり、ダークエルフたちと隷属関係にあるというではないか。

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