第123話 サラサラの砂レベルまで
そして俺がそう答えると、俺の影からダークエルフの女性が現れるではないか。
いや、俺だけではない。
俺と共に捕まった仲間の影からも同様にダークエルフの女性や男性が現れてくるではないか。
「安心しろ。 私たちはお前たちの敵では無い。 ただ、今までの一連の流れは見ていいてな、流石に手を差し伸べなければと思ったまでである。 それに助けたからといって何かを対価として頂こうとも思っていない。 むしろここで対価を頂いてしまったらご主人様兼お師匠様に怒られかねないからな。 私がお前たちを助けたいと思ったから助ける。 ただそれだけだ」
そしてダークエルフの女性はそういうと、他のダークエルフたちと共に影の中に入って行き、次の瞬間には御者をしていた賊の首は刎ねられ、幌馬車が停止する。
「おいおい、急にどうしたんだよッ!? ここからは時間の勝負なんだぞっ!? 分かってんのかっ!!」
そして急に幌馬車が停止した事で後ろから同じく幌馬車でついてきていた賊のリーダーであろう男性が怒りを隠そうともせずに怒鳴っている声が聞こえてくる。
俺たちは手足を縛られているため幌馬車の出入り口に取り付けられている布を開く事ができず、その姿を見る事はできないのだがその声音からもかなり怒っている事が窺えてくる。
しかしながらそのリーダーであろう男性の声も急に聞こえなくなったと思うと再びダークエルフたちが俺たちの影から出てくるではないか。
「一応賊たちは全員殺した。 後は子供たちを助けに行かねば。 動けるか?」
「………あぁ、問題ない。 ありがと」
たった数分で賊たちを倒したところからも、噂通りダークエルフは暗殺が得意な種族であり、できるだけ敵対したくない種族であると恐れられている理由が分かった気がした。
おそらく俺の影から現れたのと同じく賊の影を使って背後から首を掻っ切ったのであろう。
確かに影から現れる能力があれば最も簡単に、そして周囲やターゲット本人に気づかれずに暗殺をすることなど容易だろう。
白狼族こそ最高の種族だと思っていた俺なのだが今日一日でそのプライドなど跡形もなく砕け散ってしまう。
ただでさえ粉々になっていたのが、サラサラの砂レベルまで砕かれた今では素直に心の底からダークエルフたちを凄いと思ってしまう。
そしてそのまま子供たちを救出し、一番重症な者たちから順番に回復薬で回復して行く。
「なぁ、そんなに湯水の如く回復薬を使って良いのか? 使ってくれるのはありがたいのだけれどもそんな金額払えないぞっ?」
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