第121話 罠にハマってから気付く

 そう言うと賊たちは心底見下したような表情を俺たちへ向けてくるではないか。


 この誇り高き白狼族に対してである。


 そもそもたかが人族が数人でこの俺たちをどうにか出来ると思っているその傲慢さに俺は目の前が真っ白になってしまう程の怒りを感じてしまい、俺は相手側に娘が捕まっている事すら思考から掻き消えてしまいただ怒りだけで相手に襲いかかってしまう。


 その瞬間、俺は急激に力が入らなくなりそのままの勢いで頭から地面に崩れ落ち、数メートルほど滑ってしまうではないか。


 何とか上半身だけ起こして後ろにいる筈の仲間を見ると同じように崩れ落ちているのが目に入ってくる。


「だから貴様らは馬鹿なんだよっ!! 俺達がわざわざ見つかりやすい行動を取った理由が『村の精鋭を引き寄せる為』だけかと思ったかよっ!!」


 そして賊の男は実に嬉しそうに笑いながらそんな事を言うではないか。


 その瞬間俺はこいつらの罠に嵌められた事を理解する。


 少し考えればこんなところまで移動してまでわざわざ俺たちに見つかるようにした理由を考えれば、罠を仕掛けているからだと分かるのだが、娘を拉致された事、夕暮れ時であるため不安な一夜を過ごした事、そして傷つけられた娘、さらに白狼族を見下された事などで俺たちはこれが罠だと気付けない程にまで視野が狭まっていたらし。


 その事に罠にハマってから気付くのだからなんと間抜けな事か。


 普通に考えれば、実力に自信があるのならばこんな周りくどくて面倒臭い事をしなくても村をそのまま襲って、その中で売り物になりそうな奴を選抜していけば良いだけである。


 だからこの賊達は俺たちと真正面から向かって争う実力も無いからこそ、罠だけではなく、念には念を俺たちに考えさせる余裕を無くさせるギミックをいくつも仕込んでいたのだ。


 それだけ俺たちは白狼族と言う事に奢ってしまっていたのであろう。


 こんな自らの力を過信して周りが見えなくなってしまう恥ずかしい父親では、たとえ娘を救えたとしてもどんな顔で会えば良いのか。


「おい、お前ら。 コイツらをさっさと捕縛して奴隷化しろ。 商品だから傷つけんなよっ!!」

「へいっ!!」


 そして賊達はリーダーであろう俺を見下しながら話していた男性の一声で部下達が慣れた手つきで俺たちをみるみる捕縛していき、その流れで奴隷化していくではないか。


 そのところからも良い加減な態度は相手を油断させるためであり今回の一連の流れを見ても本来はかなりの頭脳派なのであろう。

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