第118話 その両方だろう
そして私は今一度初心からやり直そうと思うのであった。
◆
帝国を拠点とする闇組織の間でとある噂が広がり始めていた。
最初にこの噂を聞き始めたのは数年前である。
その噂によるとダークエルフが裏で動く組織をジワジワと締め上げていき、最終的には潰してしまうという噂であった。
この噂が流れ始めた当時は同時に二つの闇組織が潰れたのだが、蓋を開けてみればそれら組織は内部がボロボロになっており、組織として運営していくのはとてもではないが無理な状態であった。
資金、人材、武具や魔術具、それら全てが誰が見ても枯渇していたのである。
なぜそうなるまでに気づかなかったのか。
闇組織のトップがバカだったのか、そもそも今まで見ていたのはハリボテであり実際はそこまで大きくもなければ実力もなかった組織だったのか。
おそらくその両方だろう。
「昨日、ついに【蛇の生首】が潰されました」
「……数年前から数えてこれで四組織目か。 まさか【蛇の生首】がやられるとは思わなかったな」
「どうせ
そして部下があの【蛇の生首】が潰されたと言う報告を持ってくる。
あそこの頭とは旧知の中であり、あいつがそんな初歩的なヘマをして組織を潰すようなヘマをするような人物ではないと思っていたため、この報告はかなり衝撃的であった。
もしかしたら部下が言うように誰にも気付かれないように虚勢を張っていたのだろう。
だから簡単に足元をすくわれて潰されるのだ。
「あいつの組織だけは潰されないと思っていたんだがな」
しかしながら、その組織が潰れてしまった今となっては後の祭りであろうし、潰されたということは頭であったあいつはもう生きてはいないだろう。
「今回も噂のダークエルフで作られた組織が関係しているそうです」
「またその話か。 数年前からその手の類の噂話を聞くようになったのだがまずあり得ないだろう」
「と、言いますと?」
「そもそも大森林の最奥に集落を作って暮らしているような種族だぞ? そんな種族がこんな帝都まで来るのか、そして何で帝都まで来てやることが闇組織を潰すことなのか。 それら何一つとしてダークエルフにとって旨味が無さすぎる。 そう考えるとおそらくただのホラ吹きがついた嘘が広まったか、犯人が自分たちの正体を隠すためにその嘘をわざと広めたかのどちらかだろう」
「なるほど、さすが我らが
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