第117話 フランさんレベルか、それ以外か

 その光景を見ながら私はどれ程突っ立ていただろう。


 気がつくと砂埃は治っており、目の前にはフランさんの【火球】が着弾した場所に大きなクレーターができているではないか。


 その光景に元宮廷魔術師でかつ魔術の講師であるガーランド先生はアゴが外れるかと思うくらい口をけて修練場にできた穴を見つめている姿が目に入ってくる。


 普段であれば『確かに驚きはしたが、大袈裟な』と思ったのであろうが、今回ばかりはガーランド先生の気持ちも良く分かる。


 かくいう私もアゴは外れなかったけれども驚愕してしまったのは同じなのだから。


 そしてそれは私やガーランド先生だけではなく、他のクラスメイトたちも同じであり、特にダミアンは他のクラスメイトたちよりも驚愕していることが、鼻から垂れている鼻水にすら気付けていないところからも明らかであろう。


 そんな事を思いながらフランさんが作ったクレーターを眺めていると、急にフランさんが今にも泣きそうな顔しながらガーランド先生に土下座する勢いで謝罪をした後、太ももにつけているレッグストラップから白く輝く魔杖を取り出すと土魔術でクレーターだけではなく外壁まで直していくではないか。


 今まで同い年の中では私よりも魔術の扱いに長けたものはいないとは思わないまでも、それでも上位にはいるというプライドはあった。


 しかし、そのプライドはフランさんの魔術を見て見事に砕け散ってしまった。


 確かにこの学園の同年代の中では上位勢ではあるものの、フランさんと比べたらとてもではないが誇れるようなものではなくなった。


 フランさんレベルか、それ以外か。


 それ程までにフランさんと、私を含めたクラスメイトたちの差は離れてしまっているのである。


 なんなら私とフランさんとの差よりも私とクラスの中で一番魔術の行使が苦手な生徒との差の方がまだ離れていないだろう。


 しかしながら、これでむしろ私自身の事を客観的に見ることができて、自惚れていたことに気づく事ができた。


 同世代でも上には上がいる。


 それが分かっただけでもかなりの収穫だろう。


 そして私は見てしまう。


 フランさんのゴタゴタに紛れて『ダミアン程度でいいか』と言いつつ魔杖を使わずに・・・・・・・【火球】を行使して、本当にダミアンほどの制度と威力を出したクロードさんを。


 もしかしてクロードさんもフランさんほどでは無いにしろ、私よりも魔術は長けているのでは? と思わずにはいられない。


「まったく、とんでもないクラスですね……」

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