第114話 何と無慈悲な
そしてダミアンに続いてクラスメイト達が次々と魔術を行使していくのだが、何とか的に当てる事ができた者や当たらずとも的までの距離を火球を維持して飛ばせる者ならばまだ良い方で、的まで火球を維持できずに消えてしまう者が大半である。
それでも魔術自体は行使できている所を見ると、みんな何だかんだで魔術の家庭教師をつけてもらっていた事が分かるのだが、今まで真剣に取り組んでいたのか適当に取り組んでいたのかが低級魔術だからこそ窺えてくる。
それを考えるとダミアンは本人の才能も勿論あるのだけれども、あれ程の練度で行使できるというのはそれだけ真剣に練習してきたという事なのだろう。
だからこそ自慢したい、早く披露したいというのも分かるというものだ。
うん、年相応の実に男の子らしい思考だな。
そして最後尾に並んでいる俺はフランに耳打ちする。
「良いかフラン、程々にな? 程々だぞ?」
「えぇ、分かっておりますわっ」
ダミアンはきっと俺たちが思っている以上の努力を人知れずしてきたのであろうし、その努力があの態度なのだろが、だからこそフランには悪いのだがフランによって出鼻をくじかれ自信喪失などにならないで欲しいと思ってしまう。
「ではフランさん、お先に行かせてもらいますね」
「は、はいっ! 頑張ってくっださいましっ、スフィアさん!!」
そんな事を思っていると順番は巡ってきてついにフランの前まできたようで、フランの前に並んでいたスフィアがフランに一声かけてから白く美しい魔杖を取り出すと魔術を行使する。
するとスフィアは他の生徒とは違って綺麗な球体かつ白に近いオレンジ色した火球を作ると的に目がけてその火球を打ち出し見事に的に当てると爆発を起こし砂埃が舞う。
そして砂埃が収まって見えてきた的は見事に折れ曲がっていた。
その一連の流れを見たダミアンが悔しさと共に先ほどまでイキッていた自分が恥ずかしくなってきたのだろう。 複雑な表所で折れた的を無言で眺めている姿が目に入って来る。
あぁ、なんと無慈悲な……。
もしダミアンが出しゃばらずにスフィアよりも後ろであった場合、自分より上の者がいなければその才能を見せつけてから出しゃばれば良いし、自分よりも上の者がいた場合は程々にこなして大人しくするという選択肢の取り方ができたのであろうが、これに関してはスフィアが戦略も魔術もダミアンよりも一枚上手だったという事だろう。
そういうところからも男性よりも女性の方が精神的に早熟であるというのが窺えてくるのでこれはこれで面白いと他人事であるが故に思ってしまう。
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