第112話 領域
そして一時間は魔術の基礎の授業をした後、少し休憩を入れて修練上へと移動する。
修練場へと着くと、クラスメイトたちは先ほどまでつまらなそうに授業に参加していたのが嘘のようにハツラツとしており皆やる気満々といった感じである。
まぁ、座学よりも実技の方が楽しいしな。
実際に俺も前世の学生時代はそうだったなと当時の記憶や感情が蘇ってきて懐かしく思う。
「おーし、みんな揃ったようだな。 では教室でガーちゃん先生が教えた炎の魔術段位一【火球】を、奥にある的に当ててみようか」
そして
その瞬間クラスメイトたちはほんの少しだけ色めき立つのだが、その中で一人の男子生徒が「はいはいはいはいっ!!」とガーランド先生を見ながら手を上げてアピールする。
その姿からはまだ小学生気分が抜けきれていないガキ大将といった感じで、何だか微笑ましく感じてくる。
これがもし俺も精神年齢が同じくらいだと『うぜぇ』と思ってしまうのかも知れないのだが、前世も含めて五十近く人生を謳歌してきた俺からすると、子供が元気がいいというのは良いものだと、つい思ってしまう。
これ、流石に俺の精神老いすぎてしないか? と少しだけ不安になってくる。
今ならば河川敷で練習している小学生の野球チームを意味もなくずっと眺めているおじさん達の気持ちが分かる気がするんだが……。
元気な子供、特に走ったり声出したりと精一杯スポーツに取り込んでいる姿というのは何時間でも見れてしまう。
俺もその領域に一歩足を踏み入れたということなのだろう。
「どうしましたの? ローレンス様」
「いや、何でもない。 ちょっと信じたくない事実に直面しただけだよ」
そして、認めたくなかったが精神がおじさん化しかけている事に少しだけ傷心して落ち込んでいると、フランが心配そうに声をかけてくるので『何でもない』と返事を返しておく。
「はい、どうしたのかな? ダミアン・ランゲージ君」
「はいっ!! 行使する魔術は炎魔術段位一【火球】と決まっているのでしょうかっ!?」
そして、ガーランド先生は手をあげてアピールしまくっているダミアンに話しかけると、ダミアンは待ってましたとばかりにこの授業で行使する魔術は炎魔術段位一【火球】のみかどうか、別魔術を使っても良いのか? と答える。
うん、おじさんも前世で子供時代は経験しているからダミアン君の気持ちはよく分かるよ。
炎魔術段位一【火球】以上の魔術が使え、そしてみんなに自慢したいのだろう。
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