第110話 頑張れと思ってしまう

「え、えっと……わ、わたくし……ですの?」


 そして声をかけられたフランはどう接していいのかわからず俺と話しかけてくれた女子とを交互に視線を動かす。


「えぇ、そうです。 あ、申し遅れました。 私はスフィア・エドワーズと申します」

「わ、わわ、わたくしはフラン・クヴィストですわっ!!」


 とりあえずぎこちないながらもフランはなんとかスフィアと自己紹介を終えて次の授業である魔術に関しての会話をし始めたので、俺はそんな光景を微笑ましく眺めながらフランに友達ができそうで心の中でほっと一息つく。


 そしてクラスの女子の中でも中心人物であるスフィアが話しかけてくれたおかげでポツポツとクラスの女子がこの会話に加わりだし、いつの間にかクラスの女子の中心はフランとスフィアになっていた。


 その状況に、複数人もの同年代の女の子と会話したことすら今までなかったフランは軽くテンパっているのか二本のドリルは不規則にギュルンギュルンと回転しているものの、それでもなんとか踏ん張って会話をしている姿を見ると、頑張れと思ってしまう。


 とりあえず、次の授業である魔術に関しての話題というのもフランは助かっているようである。


 ただたんに次の授業の内容という話しやすい話題という理由だとは思うのだけれども、もしフランが会話をしやすいようにとスフィアが会話の話題を魔術にしたのだとしたら大したものだろう。


 もしかしたらそれを無意識のうちにできるからこそ女子生徒達の中心になっているのだろう。


「それでしたらフランさんは家庭教師と、そちらのドラゴノイドのフレイムさんに魔術を教わっていたという事なんですね?」

「えぇ、そうですわっ!! 家庭教師の先生もこちらのフレイムもとても分かりやすくて、特にフレイムはわたくしの師匠と言っても過言ではございませんわねっ!!」

「なるほど……ドラゴノイドに教わる機会なんてそうそう無いのでとても羨ましいですね。 あと、ドラゴノイドに教わった魔術というのもとても気になりますので次の魔術の授業は楽しみにしておきますね」


 そしてフランも話始めるにつれて緊張感は抜けてきたのかいつものフランらしさが出てきているようで一安心である。


 この調子ならば意外とすぐに友達もできるだろう。


 そんな事を思いながらフラン達を眺めていると魔術の授業が開始する前の予冷が鳴ったので、皆各々の席に戻っていく。


「どうだった? クラスの女子との会話は楽しかった?」

「はいっ! とても楽しかったですわっ!!」

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