第109話 心の中で祈る

 ちなみに授業内容であるのだが初日という事もあって各授業の大まかな説明で終わった。


 授業の本数に関しても本日の一日六時限(一時限一時間)ではなく、翌日からは一日三時限(一時限二時間)でやっていくらしい。


「今日は何の問題も無く終わってよかったですわね」

「そうだな。 正直誰かしら突っかかって来る者がいるだろうと思っていたから何も問題なく終わることができたことに関してはホッとしたよ」


 そして俺たちは帰宅して食事までの時間に荷物を片付けた後にフランと軽く会話をする。


 フランはなんだかんだ言っても同年代の子供たちが大勢いる空間で過ごすのはあまり経験が無いので帰宅して少し時間が経っている今でも少し興奮しているようである。


「明日から本格的な授業が始まるとの事ですが、魔術の授業はわたくし今から楽しみで仕方ありませんわっ!!」


 そしてフランはそう言うとギュルンギュルンとドリルを回転させる。


 今までは自分の親が雇ってくれた家庭教師か俺と会った時にフレイムからしか魔術を教えてくれる人がおらず、学園の教師がどのように魔術を教えるのか大変興味があるようであるようで、そして特に同年代の男女がどのような魔術を行使するのかと言うのが今から楽しみで仕方がないといった感じである。


 それと、今のフランが同年代ではどの程度の実力であるかというのも知りたいのだろう。


「うん。 そうだね。 でもほどほどにね?」

「はいっ! ほどほどにいたしますわっ!!」


 そして元気よく返事をするフラン。


 どうかその表情が曇ってしまうような事が無いように、と俺は心の中で祈るのであった。





 翌日、フランが楽しみにしていた魔術の授業は二時限目という事でまずは一限目である歴史の授業から習う。


 この歴史の授業は文字通りこの国の歴史に関する授業であり、そして周囲の反応からして皆実家の家庭教師から既に習った箇所である事が伺えてくる。


 前世でもそうであったように初めの授業は誰でも知っているような事からおさらいがてら初めて、徐々に難しい内容へとシフトしていく流れみたいである。


 そしてこの国の歴史をざっと流す形で再確認した後、ついにフランの待ちに待った魔術の授業である。


 しかしながら一限目の授業からして魔術の授業も同様に初歩的なおさらいである確率が非常に高いため、実技ではなくて魔術のメカニズム的な座学から始まる可能性は高いだろう。


「あ、あの……す、少しお話ししてもいいかしら?」


 そんな事を思いながら次の魔術の授業までの休み時間を過ごしていると、今現在クラスの中心人物になりつつある女子生徒がクラスメイトたちの視線を一身に受けながら俺たちに話しかけて来るではないか。

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