第104話 今しばらく我慢してもらえれば
「…………うん、そういう行為は婚姻関係を正式に結んでからしようね?」
「……す、すみません。 少しだけ舞い上がってしまった結果、先走ってしまいましたわ……。 は、はしたないと思ったかしら?」
流石に前世の価値観がある俺からすれば、いくらこの世界ではあまり珍しくないとはいえ在学中である約六年間、十二歳から十八歳である子供相手に欲情する気には流石になれない。
確かに日本や中世ではまだ年端も行かぬ女の子を娶るというのも珍しくはないかもしれないのだが、だからと言って俺の中の価値観が崩れるわけではないので、フランにはそういう行為は正式に婚姻関係を結んでからだと断ると、先ほど自分が言った言葉の内容を思い出したのかフランはみるみる顔を真っ赤にさせながら心配そうにはしたないと思われたのか聞いてくる。
「いや、そんな事ないよ。 僕もフランと一緒に暮らせて嬉しいし楽しみでもあるからね」
はしたないと思っていない事は確かだし、始めこそびっくりしてしまったが一緒に暮らせることが楽しみである事は間違いないので、俺はそのまま今の気持ちをフランに伝える。
「ほ、本当ですの? よ、よかったですわ。 …………で、ですがキスくらいは……良いですわよね?」
「ん? ごめん。 後半聞こえなかったみたい。 もう一度言ってもらえるかな?」
「な、何でもありませんわっ!! そ、そうですわっ! これから一緒に生活するわたくし達の愛の巣……ではなくてウェストガフ家の別荘へと行って生活するにあたって買わなければならない日用品などを確認いたしましょうっ! つい最近までローレンスのお兄様が過ごされていたという事ですので補充が必要なものとかあるかもしれませんわっ!」
そして、どうやらフランも人並みには色恋沙汰に興味が湧いていている年頃なのであろう。 しかしながらそういう行為はやはりもう少しだけ歳を取ってからじゃないと、と俺は思ってしまう。
いくらキスとは言えどもやはりまだ十二歳の女の子とはそういう気分にすらならないのでフランには申し訳ないのだが、今しばらく我慢してもらえればと思う。
そして俺がわざと唐変木ハーレム主人公の真似をして聞き返すと、そもそも独り言のようなものであった為、フランは一度言うのが恥ずかしいのか話題を逸らしてこれから過ごすであろう別荘の下見をしにこうと提案してくれるので、それに乗る事にする。
ちなみにお兄様は今年から就職先が決まっており、職場である宮廷魔術師の寮へと住み込みで働き始めている。
そこで数年間働いてから実家を継ぐそうで、元宮廷魔術師の肩書きと他所で働くという事を経験する為に就職したそうだ。
就職活動が可能な終業式後から始業式がまだ始まっていない春休みの期間に宮廷魔術師から内定をもらえるあたり昔から俺の自慢のお兄様である。
俺だったら少しでも学生でいたいため、一年まだ学生としていられるのならばぎりぎりまで学生で居続けようと行動してしまうのが容易に想像できてしまう。
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