第99話 耐性

「ねぇシシル、これは一体どういう事なの?」

「はい、村のダークエルフはお師匠様の傘下に入りたいと思っているのだ。 我らが住んでる森はあのカマキリの魔獣だけでなく他にも多種多様で危険な魔獣がいっぱいいる。 あの時お師匠様が討伐した猿だってそうだ。 しかし私たちはその魔獣どもを何とか退けるので精一杯で、例え退けたとしてもまたいつ襲われるか分からないと言う恐怖で完全に安心して暮らせた日々はここ最近はないんだ」

「だから俺の傘下に入りたいと?」

「あぁ、そうだ。 いきなりですまないとは思っているのだが私のダークエルフの村の事を考えると……」


 そう言うとシシルは俺に頭を下げる。


 両親を魔獣に殺されたシシルだからか、その表情は真剣そのものであり、そしてここへ来たダークエルフ達もシシルのように両親を殺されていないまでも同じ村に住んでいる以上似たような経験はしているのだろう。


 ダークエルフ達の表情は真剣そのものである。


 しかしながら、俺は一つだけ疑問があるのでその疑問をシシルに聞いてみることにする。


「話は分かったけど、ダークエルフの行使できる闇魔術や土魔術、それらを付与させた弓の技術があると思うんだけど、それでは魔獣達を倒せないの?」


 それら魔術や弓の技術があれば魔獣など俺の傘下に入らずとも魔獣どもを蹴散らすだけの戦力はあると思った為シシルに聞いてみるのだが、シシルは俺の問いに首を横に振る。


「それが、以前までは難なく討伐する事ができたのだがここ二百年前くらい前から魔獣達の闇魔術と土魔術の耐性が強くなっていやがるんだ。 もともとそれら闇魔術と土魔術は薄暗い森の中かつ地面に触れている生活をしている魔獣達は少しばかり耐性はあったようなのだが最近は退けるのが精一杯というレベルにまでそれら魔術に耐性がついている個体が増えているんだ……」


 なるほど……詳しいことはわからないのだがシシルの話から考察すると元々耐性がある魔獣に闇魔術や土魔術を行使して討伐しようとして失敗し、逃げ出した個体から更にそれら魔術に対抗できるくらいの耐性がついた個体が生まれてきているのだろう。


 おそらく、討伐を失敗して逃した個体というのはここ最近の話ではなく、何百年、下手したら何千年と繰り返してきてここ最近それが魔獣の身体にも影響が出始めてきていると考えて良いだろう。


 そもそもダークエルフの村を襲って逃げる事ができた個体なのでそれら二つの魔術の耐性が高い個体でもあったのだろう。 


 …………多分。


「お願いだっ!! 我らダークエルフを助けてほしいっ!!」


 そして、俺が魔獣について考えていると、それをダークエルフの対応について考えていると思ったのかシシルが助けて欲しいと叫び、頭を地面に擦り付けて土下座の姿勢になる。

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