第98話 どういう状況っすかね、これ?


 そしてシシルと出会ってから一週間が経った。


 俺の予想ではなんだかんだで頭が硬いほど真面目なシシルの事なので数日で俺の元へとくるのではと思っていたのだが、今までシシルが帰ってくる事もその兆候も無く、いたって平和な日常を過ごせていた。


『お師匠様っ!! 村の者たちがお師匠様に挨拶をしたいと言うので、お師匠様の影を通じてそちらへ今から向かってもいいか?』


 そう、シシルから思念で連絡が来るまでは。


 正直言って思念なんか初めての経験であるためかなり驚いたのだが、俺はそれを声に出さず毅然とした態度でシルルと思念で話す。


『は? いや、村の者って……それに僕の影を通じてこっちに来るって?』


 一瞬だけ村の者たちと聞いて何人くるつもりかと思ったのだが、もしかしたらシシルの血縁者が来るのかもしれないと納得はできたのだが、影を通じて俺の元へとくるというのはどういう事なのか理解できない。


 俺だろうか? 俺はシシルの真名を呼ぶ事で契約している為、俺の影があれば俺のいる方角などが分かるとかだろうか?


『あぁ、村の者だ。 本来であれば村の者全員で出向くのが一番であると私も思っているのだが足腰が悪い老人や、まだ遊び盛りの子供たちは逆にご主人様の邪魔をしそう、というかまずするので本日は大人のみである事を初めに謝罪する。 あと、取り合えず今から其方へ向かうから少し大きめの庭かそれに近い場所まで移動してもらえないだろうか?』


 そしてシシルは今からこちらへと向かうと言うではないか。


 わざわざ移動する意味もよく分からないのだが、とにかく広めの場所がいいと言う事で中庭へと向かう。


 何だろうか? お土産とかを大量に持ってきているとかだろうか? それならばこちらのお返し用も用意し他方が良いだろうか? そもそも血縁者、特にシシルの血縁者が来た場合を想定して俺は『知らなかったとはいえシシルさんを隷属してしまって申し訳ございません』と土下座をすぐにでもできるように身構える。


 そして、シシルへ中庭へ着いた事を告げると俺の影から次から次へとダークエルフが忍者の如く飛び出してきてくると、そのダークエルフの人数およそ百人ほどが俺の前で片膝をついてこうべを垂れるではないか。


 いや、どういう状況っすかね、これ? 


 正直言ってこの人数の多さも意味が分からなければ片膝をついて頭を垂れているのも意味が分からないので一番最前列の中央でみんなと同じように片膝をついて頭を垂れてるシシルへこの状況を教えてもらうべく話しかけることにする。

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