第95話 常識
しかしながら、ここで有耶無耶のままにした場合取り返しのつかない事になりそうなのでやはりしっかりと違うものは違うと言うべきだろう。
「あの、ダークエルフのお姉さん……?」
「おぉ、これはすまないっ! ドラゴノイドのフレイムさんとの会話が面白くてつい夢中になってしまったようだ。 あと、自己紹介がまだだったな。 少し遅れてしまったのだが名乗らせてくれ。 私のマナは『シシルカ・シ・ルールーシーリュー』で仮の名前はシシル・シルカだ」
「成程、本当の名前はシシルカ・シ・ルールーシーリューさんね」
何だか某国の女優みたいな名前のような名前だな。 本名は少しだけ長いがこれならばすぐに覚えられそうだ。
「そうだ。 私のマナはシシルカ・シ・ルールーシーリューだな」
「で、仮の名前がシシル・シルカ。 と言うことは他の人がいる場合は仮の名前である方を取ってシシルさんとか呼べば良いのかな?」
「あぁ、そうしてもらえると有難い。 マナを言葉にして呼ばれ、返事をしてしまった場合我らダークエルフは呼ばれた者に魂の契約をもって隷属されてしまうからな。 だから我々ダークエルフにはマナとは別に仮の名前があるのだ」
成程、少し不便だなとは思うものの実にファンタージーっぽくて良いではないか……ん? あれ? いやいや……。
「……は?」
「……え?」
「いや、今さっき僕がシシルさんの本名、マナを呼んでシルルさんは返事をしました……よね?」
「ん? 当たり前だろう? これから私の師匠となる方だ。 仮の名前しか教えない、本名を呼んでくれたにも関わらず返事をしないなど、それこそ師匠に失礼だろう? 私とて言葉こそは少しばかり乱暴だがこれでも常識は弁えているつもりだ」
…………常識って何だろう。 これが異文化というやつか……。
「え? じゃ、じゃぁ……」
「そうだ。 これによって私のお師匠様は魂でも繋がったという事だな。 何かお申し付けなどあれば是非言ってくれて構わないからな。 ちなみに私は隠密行動に長けているから暗殺から情報収集まで草としての仕事は任せてくれっ!!」
「良かったですねっ!! シシルさんっ!! これでシルルさんも私たちの同僚ですっ!!」
「あぁ、これでフレイムさんは私の姉弟子となったわけだっ!! これからよろしく頼む、フレイム姉様っ!!」
え? なにこれ? 俺には拒否権はないのか?
そして俺はハイライトが消えた目でフレイムとシシルがお互い楽しそうに会話をし始めるのを眺めていると、シシルが何か思い出したような表情をして俺の元へとくるではないか。
そういえば最初シシルは俺に何か頼み事があるとかないとか言っていたことを思い出す。
もうやめてっ!! 俺の精神と胃のライフはゼロよっ!!
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